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iOS15の「メールプライバシー保護機能」のメールマーケティングへの影響を調査してみた。

はじめに

こんにちは、株式会社WOW WORLD(旧 エイジア)の藤田です。

Appleは、iOS15を今年2021年の秋にリリースすると発表しました。iPhone13のリリースと同日で9月か10月の予定だそうです。
そのiOS15でリリースされる新機能に「メールプライバシー保護機能」があります。

今回はこのメールマーケティングへの影響が大きいメールプライバシー保護機能を取り上げてみます。どのような仕組みで動作し、影響があるかを調査しました。
Appleの下記の説明では、何が変わってどこに影響があるのか分かりづらいです。これから順を追って説明します。

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※ 前回の 携帯キャリアのメールアドレスには、なぜ迷惑メールが届きやすい?を技術的に検討する(前編) の続きも作成しだい公開します。

メールマーケティング界隈で言われていること

iOS15のメールプライバシー保護機能を有効にしているiPhoneについては、HTMLメールにおいて
1.開封率が100%になる
2.リアルタイムな位置情報や時刻に基づいたメールで表示される内容の最適化ができなくなる
という指摘がメールマーケティング界隈でありました。試したところ、メールプライバシー保護機能を有効にしたiPhoneではその通りでした。特に「1.開封率が100%になる」ことはメールマーケティングに与える影響が大きいです。

メールプライバシー保護機能で変わるもの

では、なぜこのようなことが起きるのか、それはメールプライバシー保護機能で、HTMLメール中の画像を取得する方法が変更されるからです。なお、対象は、iOSの標準メールアプリです。iPhoneを使っていても、Webメール使用者やGmailアプリ使用者には影響しません。

HTMLメールの画像が表示される仕組み(おさらい)

HTMLメールでは、以下のような仕組みで画像が表示されます。(※携帯キャリア向けに画像にメールを添付するものは例外)

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上記の⑤や⑥のアクセスはこのようになります。
・アクセス有無:受信者が開いた時だけアクセスされる
・アクセス時間:受信者が開いたタイミング
・アクセス元IP:スマートフォンのグローバルIPアドレス
・UserAgent(ブラウザの種別):スマートフォンのUserAgent(iPhoneならSafari)

メールプライバシー保護機能が有効なiPhoneでHTMLメールの画像が表示される仕組み

一方、メールプライバシー保護機能が有効なiPhoneでは、以下のような仕組みで画像が表示されます。

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上記の⑤や⑥のアクセスはこのように変わります。
アクセス有無:受信者が開かなくても必ずアクセスされる
・アクセス時間:届いた瞬間
アクセス元IP:Appleのプロキシ(CDN使っているから場所不明
UserAgent(ブラウザの種別):Appleのプロキシの謎UA「Mozilla/5.0」(これだけ、iOSとかiPhoneとかない)

メールマーケティング上の影響

iPhoneのメールプライバシー保護機能の影響は主に4つあると考えられています。
①開封率(=メールを開いた人÷メールが届いた人)
②時刻、IPアドレス、UserAgentに基づく動的なバナー画像応答
③メールを読むデバイス情報の取得
④HTMLメールで使用する画像への集中アクセス

1つめの影響は開封率です。例えばメール配信先の4割がiPhoneで、いままで開封率が20%(10通送れば2通読まれる)であれば、このような分布ですが(総数=1,000で例示)

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このように変わります。

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20%が52%になるので、開封率という指標としての数値の連続性は、意味をなさなくなります。開封率自体は件名の良し悪しを判断するうえで役立つ重要な数値ですが、iPhone以外の開封率で判断するなどの工夫が必要だと考えています。

2番目の影響は時刻、IPアドレス、UserAgentに基づく動的なバナー画像応答です。日本で活用されている例は少ないですが、例えば、今日の23時に終了するセールがあるとして
- 当日の12時にメールを見た:あと11時間でセール終了
- 当日の18時にメールを見た:あと5時間でセール終了
- 当日の22時にメールを見た:あと1時間でセール終了
とバナー画像の応答をアクセスされた時刻などに基づき変更する仕組みです。
国土が東西に広くタイムゾーンも異なるアメリカではIPアドレスからの位置情報で東海岸か西海岸かでバナー画像を変更、といったことも行われます。
このような動的なバナー画像応答は、
・時刻:届いた時点で画像を取得し、その後再取得しないので時刻に差異が出る
・IPアドレスからの位置情報:Appleのプロキシが使用するCDNのIPアドレスになるので、情報源として使用できなくなる
ので実施が不可となります。

3番目の影響は「メールを読むデバイス情報の取得」です。HTMLメールを送信する上で、利用者の「iPhone、Android、PC」の比率を知ることは大事です。バナー画像やLPページのクリエイティブなどに影響します。いままでUserAgentに「iPhone」の文字があれば、おおよそ iPhone と判別できていたのですが、このルールは要変更です。

4番目の影響は「HTMLメールで使用する画像への集中アクセス」です。いままではHTMLメールで使用する画像へのアクセス量・タイミングは
・アクセス量:HTMLメールを見た人分
・タイミング:送ってから1時間くらいがピーク(山がなだらか)
であったものがメールプライバシー保護機能を有効にしたiPhoneでは
・アクセス量:HTMLメールを送った人分(おそらく3~8倍に増加)
・タイミング:送った直後がピーク(とんがりが急、スパイク)
と変わります(アクセス量の増加は、純粋に不必要なトラフィックを発生させている点であまり環境に良くない……)。

終わりに

このiOS15のメールプライバシー保護機能、メールマーケティングの方式に変更を迫る大きなものです。今後、他のプラットフォーム(Google、Windows)に波及する可能性もあります。

いままで取得していた開封率を今後どのように捉え活用すれば良いかなど、メール送信についてご要望やお悩みを持つ方は、弊社のWEBCASというサービスへ、お気軽にお声がけください。

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