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織姫の継承-祖母の機から紡ぐ一宮の未来

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#真清田神社

第一章 祖母の織物への想い②

祖母から聞いた織物の神にまつわる伝承 真央が少し大きくなった頃、つね子は真央を神社に連れて行った。  境内に鎮座する真清田神社は、織物の神様・萬幡豊秋津師比売命を祀る由緒ある神社だ。  「真央ちゃん、今日は一宮のお話をしてあげるわね」  二人が参道を歩きながら、つね子が語り始める。  「この辺りは、むかしから織物が盛んだったのよ。 それもそのはず、一宮のお守り神様は織物の神様なのだから」  「織物の神様?」真央が目を丸くしてつね子を見上げた。  「そうよ。萬幡豊秋

第三章 再会と新たな始まり③

新たなパートナーシップの始まり 健太との再会から数日後、真央は市役所の会議室で健太と向き合っていた。  二人で一宮の織物の未来について、熱心に語り合っているのだ。  「一宮の織物の魅力を、もっと広く発信していく必要があるよね」  健太が真剣な眼差しで提案する。  「うん。私も外部の人たちに、もっと一宮の良さを知ってもらいたいの」  「じゃあ、定期的に織物教室を開くのはどうだろう。参加者に技術を伝えつつ、織物の素晴らしさを感じてもらえるはずだ」  「いいね、その案。

第四章 御衣奉献大行列①

緊張の朝  七夕まつりの当日。  真央は祖母の形見の浴衣に身を包み、鏡の前に立っていた。  鮮やかな朱色の地に、金糸で織り出された鳳凰の舞。  その美しさに、真央は我知らず息を呑む。  「おばあちゃん…今日は絶対に成功させるからね」  真央は心の中で、亡き祖母に語りかけた。  御衣奉献大行列は、織姫の衣装を真清田神社に奉納する、七夕まつりの目玉行事なのだ。  その中で真央は、一宮の伝統工芸品を纏い、行列の先頭を歩くことになっている。  「佐藤さん、もうすぐ出