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織姫の継承-祖母の機から紡ぐ一宮の未来

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#一宮七夕祭り

あらすじ

愛知県一宮市に住む佐藤真央は、幼い頃から祖母・つね子の影響で織物に深い愛着を持っていた。 つね子から織物の技術と精神を受け継いだ真央は、真清田神社に祀られる織物の神様・萬幡豊秋津師比売命にまつわる伝承も教わり、織物への思いを強くしていく。 大学卒業後、真央は一宮市役所の織物振興課に就職する。 そこで幼馴染の篠崎健太と再会し、二人で一宮の織物の未来を切り開く決意をする。 大型ショッピングモールの進出により衰退しつつある商店街や織物産業を再興させるため、二人は力を合わせて

第一章 祖母の織物への想い①

真央の幼少期の思い出   真央が物心ついた頃から、祖母の佐藤つね子は常に織物に携わっていた。  古い機織り機の前に座るつね子の姿は、真央の心に強く焼き付いている。  「おばあちゃん、どうしてそんなに織物が好きなの?」 幼い真央が不思議そうに尋ねると、つね子は優しく微笑み、真央を膝の上に乗せて語り始めた。  「真央ちゃん、織物は命を吹き込む仕事なのよ。一本一本の糸に想いを込めて、模様を織り込むたびに、そこにはかけがえのない物語が宿るの。」  真央はつね子の言葉の意味を

第二章 織物の道へ①

真央の学生時代の織物体験 高校に進学した真央は、地元の織物会社が主催する織物教室に通い始めた。  本格的な織物の技術を学べる環境に、真央は胸を躍らせていた。  教室に足を踏み入れた真央は、整然と並ぶ織機に目を見張った。  糸を操る職人たちの真剣な眼差しと、規則正しく繰り返される杼の音が交錯する光景に、真央は圧倒される。  「新入生の佐藤真央です。織物を学ばせていただきます、よろしくお願いします」  真央が頭を下げると、講師の吉田亜希子が暖かい笑顔で迎えた。  「佐

第二章 織物の道へ②

織物の技法に魅了される  織物教室に通い始めて数ヶ月が経った頃、真央は様々な織物の技法に魅了されるようになっていた。  古来から伝わる織りの技の数々は、真央の創造力を大いに刺激した。  ある日、吉田が風通織の制作工程を実演した。  真央は、経糸と緯糸が織りなす繊細な文様の美しさに息を呑んだ。  「佐藤さん、風通織の魅力って特別だと思わない?」実演を終えた吉田が、真央に語りかける。  「はい、本当にため息が出るほど美しいです…」  「風通織は、高度な技術と忍耐が必要

第三章 再会と新たな始まり②

健太の共感と協力の申し出 会議を終えた真央は、そわそわと落ち着かない。  約束の時間が近づくにつれ、期待と不安が入り混じる。  (健太君は、私の話を理解してくれるだろうか…)  思い悩む真央の前に、健太が現れた。  「待たせたね、真央」  「ううん、私も今来たところだから」  照れくさそうに微笑み合う二人。そして、近くの公園へと向かった。  ベンチに腰掛けた真央は、おずおずと切り出した。  「ねえ健太君、覚えてる? 昔、将来は二人で織物の世界で活躍しようって、