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第二章 織物の道へ②

織物の技法に魅了される


 織物教室に通い始めて数ヶ月が経った頃、真央は様々な織物の技法に魅了されるようになっていた。

 古来から伝わる織りの技の数々は、真央の創造力を大いに刺激した。
 ある日、吉田が風通織の制作工程を実演した。

 真央は、経糸と緯糸が織りなす繊細な文様の美しさに息を呑んだ。

 「佐藤さん、風通織の魅力って特別だと思わない?」実演を終えた吉田が、真央に語りかける。

 「はい、本当にため息が出るほど美しいです…」

 「風通織は、高度な技術と忍耐が必要とされる織りなの。糸の調子を つかむのがとても難しいのよ」

 吉田の説明に、真央は憧れの眼差しを向ける。

 「私も、いつか風通織に挑戦してみたいです」

 「そうね、佐藤さんなら必ずできるようになるわ。根気強く練習を積んでいけば」

 吉田の言葉に後押しされ、真央は風通織の修練に打ち込むことを心に決めた。

 それからの真央は、風通織の制作に明け暮れた。

 何度も失敗の連続に、心が折れそうになる時もあった。

 「思うようにいかない..」真央がふさぎ込んでいると、吉田が背中を押してくれた。

 「佐藤さん、織物の道は一直線じゃないの。回り道も、時には必要なのよ」
 「でも、このままじゃいつまでたっても上達できない気がして…」

 「焦らないで。失敗の先にこそ、本当の成長があるのよ」

 吉田の言葉に、真央は頭を上げた。

 「吉田先生…私、もう一度頑張ってみます」

 「ええ、その意気よ。信じることが大切なの」

 吉田の激励に、真央は再び織機に向かった。

 幾度となく糸を紡ぎ、文様を織り込んでいく。

 失敗の数だけ、真央の技術は確実に向上していった。

 そして迎えた風通織の完成の日。

 真央の作品を見た吉田は、満足そうにうなずいた。

 「佐藤さん、あなたの風通織、本当に素晴らしいわ」

 「吉田先生、ありがとうございます…! 私、やっとここまで来れました」

 真央は、感極まって涙を流した。

 諦めずに続けてきた修練の日々が、今この瞬間に花開いたのだ。

 「佐藤さん、あなたには織物の才能があるのよ。その才能を、もっと磨いていってほしいの」

 「はい、頑張ります。織物の可能性を、もっと追求していきたいです」
 真央の瞳は、希望に満ちていた。

 風通織を通して学んだこと。それは、織物の奥深さと、諦めない心の大切さだった。

 「織物は、終わりのない学びの連続なのね」

 そう感じた真央は、更なる高みを目指して織りの修行を重ねた。

 吉田から教わる様々な技法を、一つ一つ自分のものにしていく。

 真央の織物は、日に日に洗練されていった。

 伝統的な技を継承しつつ、そこに真央ならではのエッセンスを加えていく。

 やがてその独創性は、教室内でも一目置かれるようになった。

 「佐藤さんの感性は、本物ね」

 吉田も、真央の才能を認めざるを得なかった。

 教室での評価は、真央に自信を与えた。

 伝統を守りながら、新しい織物の形を生み出していく。

 それが、真央の使命であると感じられるようになっていた。

 「私なりの織物を、もっと追求していきたい」

 技法を学ぶ中で芽生えた、真央の熱い想い。

 その想いは、真央の人生を織物一色に染め上げていくことになる。

 多彩な織りの技法と出会えたこと。

 真央にとって、それはかけがえのない財産となった。

 「織物の可能性は、無限大ね」

 そう呟きながら、真央は織機と向き合い続けた。

 先人の知恵から学びつつ、自分だけの表現を模索していく。

 真央の織物人生は、技法への探求心に突き動かされるように、前へ前へと進んでいくのだった。

 吉田の教えを胸に、仲間たちと切磋琢磨しながら。

 真央は、織物の真髄に近づきつつあった。

 伝統を革新していく。そんな理想の織物を求めて、真央の果てしない旅は続く。

 多彩な技法への探求が、真央の人生を豊かに彩っていくのだ。

 「私の人生を賭けても、追求し続けたい世界がある」

 真央のそんな決意が、織物の神髄を紡ぎ出す原動力になっていた。

 技法の探求を通して、真央は織物の本質に触れつつあった。

 そこから生まれる真央ならではの表現。

 それこそが、真央の求める理想の織物像だったのだ。

 「私には、織物が必要なの」

 そう感じられる日々の中で、真央の人生と織物の絆は、ますます深まっていった。

 多彩な技法に魅了され、それを糧にしながら。

 真央は、自分だけの織物の世界を切り拓いていくのだった。

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