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エッセイ 黄色い涙のあと

 ゴールデンウィークはただ実家に帰っただけでした。僕の実家も女房の実家も江南市です。その江南市に古知野というところがあって、そこで以前、もう1年ぐらい前になるのですが、映画のロケが行われたということで、行ってみることにしました。
 その映画というのは、ジャニーズ事務所の「嵐」というグループが出演している「黄色い涙」という映画です。昭和30年代の東京の下町 阿佐ヶ谷を舞台にした青春映画で、古い東京の町並みを再現するために、古知野の古い商店街が使われたようです。
 行ってみると、ご多分に漏れず、寂れた活気のない商店街で、藤まつりで江南市全体では、賑わいを見せているのに、少し大通りをはずれたこの商店街は、通りを歩く人影さえありません。その中に、今は使われていない古い洋品店を改装して撮影に使った食堂があって、撮影風景の写真が貼ってあったり、撮影に使われたであろう料理の品書きが壁に貼ったままにしてあったり、昭和30年代当時の古ぼけたポスターが貼ってあったりして、撮影当時の雰囲気が今も残されていました。また、店内にテレビとビデオデッキ、それにビデオテープも何本か置いてあって、そこで自分の好きな映画を見られるようになっていました。映画好きな人のためのちょっとしたイマジネーション空間になっていて、それなりに客寄せの工夫は見られるのですが、残念ながら、僕たち以外にはお客さんはもちろん、お店の人も誰もいませんでした。ビデオテープが盗まれやしないかとこちらが心配になるくらいでしたが、盗みに来る人さえいないだろうと思われるひとけのなさでした。せっかく客寄せの目玉にしようと期待したものがあてがはずれて、あるいは時間の経過とともに飽きられて、遺跡のように風化しつつあるのを見るのは、寂しいかぎりでした。           
 小さな個人の商店が単独で生き残っていくことは、難しいかもしれませんが、滋賀県の長浜市の黒壁スクウェアなど成功例もあるので、みんなで力を合わせて知恵を出し合って、頑張ってもらいたいものだと思います。 

 因みに「黄色い涙」は江南市内の映画館をはじめ、名古屋のセンチュリーシネマでも絶賛公開中です。

                       平成19年5月10日 記す

 

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