エッセイ 古いエアコン
やっぱ、新しいエアコンはいいなあと思った。思いながら、和室のエアコンのことを思った。捨てずに取っておいてよかった。ありがとう。
突然リビングのエアコンが動かなくなった。酷暑の真っ最中に。買ってもう10年以上たっているから、替え時だったのだろう。壊れるとはこういうことなのだろう。
人間も同じ。年をとれば、あちこちがいかれてくる。若いうちは修理をすれば元に戻るが、年をとれば、戻らない。不具合が普通になってしまう。そのうち、うんともすんとも言わなくなってお陀仏である。覚悟はできている。あきらめはついた。
すぐに電気屋さんに頼んで新しいエアコンに替えることにした。しかし3日かかるという。エアコンなしに3日過ごすのは、命に関わるぐらいの猛暑続きであった。リビングの隣の和室に、さらに古い長年スイッチさえ入れてないエアコンがあるのを思い出した。動くかしら。おそるおそる電源を入れてみると動いた。ゆるゆると冷風を吹き出し始めた。ありがたい、これで助かる。エアコンの取り付けてある向きが違うので、扇風機でリビングに送ることにした。リビングとの境界はドアではなく、襖なので、冷風はリビングまでやすやすと届いた。和室のエアコンは変な音もたてずに冷風を出し続けてくれた。
3日後に新しいエアコンが来た。最新式の省エネタイプである。自動で掃除もするという。やっぱ、新しいエアコンはいいなあと思った。思いながら、和室のエアコンのことを思った。襖は、今は締め切られているので、和室のエアコンは見えない。電源を抜かれ、暗い部屋で以前の眠りに戻っている。捨てずに取っておいてよかった。ありがとう。あの古いエアコンが役に立つ日がまた来るだろうか。
このエアコンが我が家にやってきた時の話はこちらを読んでください。
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