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★エッセイ集 視座

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#死

エッセイ ミステリーは文学にあらず

 誤解をして欲しくないのだが、私はミステリー小説が大好きである。初めて読んだのは、シャーロック・ホームズで、小学校の時だった。中学では江戸川乱歩の怪人二十面相に夢中になり、大学の時は横溝正史を読み漁った。  しかし、あえて言う。ミステリー小説は文学にあらず、と。もっとも文学の定義にもよるのだが、私は文学とは、作者と作者以外のものとの戦いであると思う。葛藤と言ってもいいし、私個人的には、摩擦という言葉が好きなのだが、戦いの相手は、時代であったり、社会であったり、組織、家族であっ

エッセイ ジャーマンアイリスに抱かれて(改題)

闘病の 陰さえ見せぬ 明るさの  秘密を知るや 手首の古傷 朝毎(あさごと)に 花を飾りし  君が今 花の棺に ひとり眠れる  これは、僕が印刷会社に入って間もない頃、仕事をアルバイトで手伝いに来てくれていた竹内美貴さんの死を悼むレクイエムです。  美貴さんは若くして骨肉腫を患い、余命宣告を受けた状態で会社に働きに来たのでした。大学へ進学予定だった彼女の最後の望みは、少しでいいから、働いてみたいということ。悪い足を引きずりながら、朝早く来て、職場に花を飾ってくれました。彼