大学生の息子たちへ伝えたいこと 目的を忘れない編
子どもを産む前、アラサーの頃、夫と2人で東京に遊びに行きました。
私の場所に対する嗜好性は、国内より海外、都会より自然だったので、東京訪問は初めてでした。
東京は、今まで訪れた数々の大都市の中で、一番人が密集していました。
人が多すぎて、息苦しいとすら感じました。
東京最終日、JR新宿駅の、各ホームにあがっていく階段がある広い地下通路。
私は、夫がトイレに行っている間、端っこで人の流れを眺めていました。
通路は、渋谷駅前のスクランブル交差点もかくやの混雑ぶりで、人が数珠つなぎで行進しています。
私の目の前を、ひとりの小柄なおばあさんが横切っていきました。
大きなボストンバッグひとつと、真ん丸な風呂敷包みをひとつずつ両手に持っています。
その時、イライラした様子の若い男の子が、後ろから「邪魔」と言っておばあさんを押しのけたんですね。
おばあさん、荷物ごと転んでしまいました。
若かりし頃の私は、カッとなって、その男の子の腕を取って、「何やってるの!」と言いました。
その子は、急に知らない人に腕を取られ、非難されたことで、私の方を振り返り、すごい目で睨んできました。
あ、ヤバイ。
この子、ヤンキー崩れの子だ。
殴られるかも…と少々ビビりました。
周りにいっぱい人がいたけど、みんな知らんぷりでした。
ちょうどその時、トイレから出てきた夫が、私と男の子の間に割って入ってきました。
夫に事情を訊かれたので、ありのまま伝えたら、なんと夫は男の子に謝りました。
「ごめんね、この人が迷惑かけて。俺に免じて、許してくれないかな。」と頭を下げました。
男の子は、夫の対応に毒気を抜かれたようで、さっと踵を返して、歩み去りました。
私も、内心ホッとしました。
夫は、おばあさんのところに行って、「大丈夫ですか。」と声を掛けています。
私もあわてて、合流しました。
その後、おばあさんの行きたいホームまで、夫が荷物を持って、私が手をひいて一緒に行きました。
ホームまで、長い階段しかなかったんです(どこかにエレベーターがあったのかな?)。
帰りの新幹線で、私は夫からはこってりと絞られました。
「ああいう初対面の男の子に、説教とかやめなさい。大ケガするかもしれないよ。怒りに反応しないで、まずおばあさんを助けなきゃ」
と諭されました。
おっしゃる通りでございます。
この冷静さは、この頃の私にはなくて、夫から学んだことのひとつです。
私の場合、感情に振り回されると、本来の目的と大幅にずれてしまうことが多々ありました。
感情に反応しないで、目的にまっすぐ向かうこと。
子どもを産む前に、気づけてよかったことのひとつです。
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