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0 x 1= Love Song その甘やかな倒置

 昨年末、改めて何度も聴き直した曲がある。2021年5月31日にリリースされたTomorrow x Together の「0x1=Love Song(I know I love you)」(以下ゼロバイと表記)だ。

  Twitterやnoteでフォローさせていただいている天才MOA達が、リリースから1年半以上が経ったゼロバイついて改めて考察したり語り合うのを見聞きし、自分もこの作品を初めて聴いた時に受けた衝撃を思い出し、その何が多くの人に「強烈に刺さる」ゼロバイポイントなのかを考えてみたかった。


ゼロバイポイント①  倒置されるTxTとMOAの関係性

 0 x 1= 0。これは数学が恐ろしいほど苦手な私にでもわかる。しかし、タイトルでの解は 0 x 1=Love Song なのだ。これは一体何を表しているのだろう?

이 제로의 세계 속 このゼロの世界の中で
I know you’re my 1 & only
이 끝이 없던 어둠 속 この終わりのない闇の中で
Like oh my god so holy
0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori

 リスナーはすぐにヒントを提示される。歌い出しの歌詞にあるとおり、0は「僕」が住む世界のことだと。

 寂れた団地の一室で、両親の喧嘩にうんざりする「僕」(MV参照)。いつもチェスに負け続け、天国にさえ自分の席があるとは思えない自己肯定感最低レベルの「僕」。これは一体誰のことなのか。

 私は「僕」はTomorrow x Together のファン、MOAの分身だと考える。あの団地の部屋のひとつひとつの中に、傷つき、満たされない想いを抱えたMOAたちの姿が目に浮かんだのは、私だけではないはずだ。

무저갱의 바닥에서     深淵の底で 
넌 유1하게 빛나던 gold    君は唯一輝く gold
0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori

  ではそんな「僕(MOA)」が見つけた唯一のgold (glow)である「君(you girl)」は誰なのか?

 これは紛れもなく、MOAにとっての Tomorrow x Together という存在である。

 そう、この曲の中で Tomorrow x Togetherは、自らとMOAの関係性の倒置をしているのだ。そしてこの倒置こそが、本曲が多くのMOAの心を掴む点だと考える。彼らは自分たちではなく、MOAの心情を歌ってくれているのだから。

ゼロバイポイント②  ストレートで切実な歌詞

 人間とは程度の差こそあれ何かを心の拠り所として愛し、そこにすがりながら生きるものだと思う。乱暴に言ってしまえば何かに依存して、うまくいかない毎日をやり過ごしている。そしてその依存は孤独で気分が沈み込んでいる時により顕著になる。

Now I can’t stop thinking bout you
When I’m sinking alone
0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori

 そして依存することによって、今度は自らがその対象からも等しく愛され依存されることへの欲求が生まれる。そこに出てきたキラーフレーズ。

Please use me like a drug
0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori


 私たちファンはしているではないか、drugのように彼らに依存することを。寂しい時、辛い時、彼らの曲を映像を繰り返し視聴し慰めを得ることを。
 しかし、「僕(MOA)」は彼らから勇気ややすらぎを与えられることはあるにせよ、狂おしく依存されるということはない。その現実に染み入るような寂しさを感じるのではないだろうか?自分も drug のように彼らに求められたい、そんな欲求を直接的に表したこの歌詞に、心臓を掴まれた人は多いはずである。


ゼロバイポイント③  他曲に類を見ないレベルのセンシュアリティ

Say you love me Say you love me  
세계의 끝까지 世界の果てまで
All or nothing I want all of you  (I know I love you) 
Say you love me Say you love me 
세계의 끝까지 世界の果てまで
All or nothing I give all of you (I know I love you)
0X1=LOVESONG (I Know I Love You) feat. Seori

 女性ボーカル(オリジナルバージョンは seori、日本語バージョンは幾田りら)とボムギュ、ヨンジュン、スビンがひとりずつ声を重ねて歌うこのパート。初めて聴いた時にものすごくドキドキしたことを思い出す。

 女声と合わさることによって露わになる彼らの男性性。いつもの可愛く清涼なイメージから離れて、大人の男としての表現を魅せてくる。ダンスの振り付けを観ても、このパートが感傷的かつ官能的な意味を持つことが理解できる。

そしてこのフレーズこそが、0 x 1 (MOA x TxT) の解が Love Song であることを明らかにしてくれているのだ。


 以上3つが、ゼロバイが T x T の他の作品とは一線を画す点だと考える。そして、ゼロバイ以前、ゼロバイ以降でこのグループが表現する世界観ががらりと変わったと言われる所以だと思う。


 つらつらと独りよがりな解釈を書いてきた。この記事が何のためになるのか全く想像がつかない。それでもゼロバイへの自分の思いを語り、人とシェアしたいと思うほどにこの曲は魅力的なのである。 

 リスナーひとりひとりに独自のゼロバイ論、ゼロバイポイントがあると思う。日本のMOAだけでなく、世界中のMOAたちがこの曲について語るのを聞いてみたい。

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