誰でもできる特許請求の範囲の読み方
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弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
今回は、「誰でもできる特許請求の範囲の読み方」について説明します。
特許出願の書類に特許請求の範囲というものありまして、ここに請求項1、請求項2・・・という項目が記載されています。
これ、一般の人からすると、とても読みにくいですよね。
私も初めて読んだとき、いったいここには何が書いてあるのだ???これは本当に日本人が書いた文章なのか???状態でした 笑
今回は、この請求項を簡単に読む方法を説明します。
実は、この請求項の内容を理解することはとても重要です。
なぜなら、特許の権利範囲は請求項の記載によって決まるからです。
つまり、他人の権利を侵害しているか否かは、請求項を読むことで大体わかります。
先に、特許の権利範囲の考え方を説明します。
基本的に、請求項のうち独立項の記載内容を全て実施すると侵害です。
独立項とは、他の請求項に従属していない請求項のことで、請求項1は必ず独立項です。
基本的に、独立項の内容を1つでも外せば侵害とはなりません。
これを簡単に説明します
請求項1の内容 A+B+C
他人の実施形態 A+B 非侵害
A+B+D 非侵害
A+B+C 侵害
A+B+C+D 侵害
上記の様に、請求項の内容がA+B+Cならば、他人がA+B+Cを実施すると侵害となり、そうでなければ非侵害です。
次に、実際の請求項の読み方を説明します。
これには、先ず請求項の書き方を理解する必要があります。
普通、物事を説明するときは、下図にあるように全体から末端に向かって書きますね。
ピラミッド構造とかいわれる説明のやり方で、この方が人間の頭には理解しやすいと思います。
一方、請求項は下図にあるように、一般的に末端から全体に向かって書いていきます。
これって、図に書くと分かりますが、文章で書かれると何を言っているのか分かりにくいですね。
だから、初めて請求項を読む人は、請求項を読んでも何これ状態になってしまうのです。
この図の装置Xを実際に請求項に書くとすると、およそ以下の様になります。
【請求項1】
○○のa、○○のb、及び○○のcを備えるAと、
○○のd、○○のe、及び○○のfを備えるBと、
○○のg、○○のh、及び○○のiを備えるCと、
を備えることを特徴とする装置X。
これくらいであると、初心者がいきなり読んでも何とか理解できます。
でも、実際の請求項はもっと複雑です。
そんなときは、先ず「・・と、」のところだけを先に読むのです。
ここでは、「Aと、」「Bと、」「Cと、」を備える「装置X」とだけ読みます。
続けて、Aは「○○のa、○○のb、及び○○のcを備える」、Bは「○○のd、○○のe、及び○○のfを備える」・・・といった感じで読むと、内容を理解しやすくなります。
上記の【請求項1】は、要素列挙型といわれる書き方で、比較的それぞれの構成要件(A,B,C)を把握しやすいと思います。
しかし、書き流し型といわれて、「・・と、」がなく、改行せずに書かれている請求項もあります。
そんなときは、請求項をコピペして、自分で構成要件毎に改行して整理してみることをお勧めします。
そうやって読んでいくと、自分の全く知らない技術分野の文献はともかく、大抵の請求項は読めるようになり、その内容が理解できます。
ここで、そんな書類読む必要あるの?といわれる人もいらっしゃると思います。
結論を申しますと、知的財産を活用した経営をするなら必要であり、知的財産とは無縁の経営をするなら不要といえます。
例えば、何かを開発しようとしたとき、事前に他社特許を調べることによって、権利侵害を避けつつ、より良い商品を作り出すことが可能になります。
こういった運営をするなら、請求項の内容を理解できるようになることは必要と言えます。
今度、同業他社の特許文献でも読んでみてはいかがでしょうか。
もっとも、実際の判断では、明細書の全文や意見書を読んで検討したり、均等論も考慮したりする必要があります。
そんなときは、お近くの弁理士にご相談ください。
この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。
坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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