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真の発明者を記載しよう その1

【稼ぐ中小企業になるための知的財産情報】
 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「真の発明者を記載しよう その1」について説明します。

 特許の願書には「発明者」を記載する欄があります。
 ここには、本来の発明者を記載するべきなのですが、中小企業だと往々にしてその会社の社長が記載されていることがあります。

 発明者は複数記載できるので、社長を筆頭に本来の発明者を記載しているのはまだ良い方です。
 よろしくない例では、どんな発明でも社長のみが記載されています。
 これ、本当に社長だけが発明者であればいいのですが、結構な割合で従業員が発明者であることがあります。

 するとどうなるか?
 従業員の士気が下がります。
 発明者というのは、名誉権のような人格権的な性質を有しています。
 そして、特許出願をして公報が発行されると、発明者の氏名が掲載されます。
 さらに、本来なら金一封などの報奨をもらえる立場にあります。
 これらをないがしろにされるのですから、従業員の士気が下がるのは当たり前です。
 ですので、なるべく本来の発明者を記載する方が良いのです。

 但し、会社によっては社内の、又は対外的な事情で仕方なく社長を発明者にしなければならず、従業員もそれに納得していることもありますので、このような場合は除きます。

 では、真の発明者とはいったい誰のことを言うのでしょうか?
 発明者が1人の場合はその特定は難しくありません。
 問題となりやすいのが、発明者が複数の場合です。

 この場合、発明者を一言で表わすと「技術的な創作」をした人になります。
 つまり、準備やデータ取りをするだけの単なる補助者、一般的な助言者、資金の提供者、命令を下すだけの管理者等は発明者とはなり得ません。

 もう少し詳しく説明します。
 発明者になるためには、「技術的な創作」のうち「創作行為に現実に加担しているか」が重要になります。
 この点については複数の言い方というか意見がありますが、「課題を解決するための着想及び具体化の過程において、発明の特徴的部分の完成に創作的に寄与したことを要する。そして、発明の特徴部分とは、従来技術に見られない部分であり、当該発明特有の課題解決手段を基礎付ける部分を指す。」と考えられます。

 これを、発明が完成に至る過程で見てみますと,
 ① 一定の技術的課題の設定(目標の設定)
 ② 課題を解決するための技術的手段の採用
 ③ その技術的手段により所期の目的を達成しうるという効果確認
 となります。

 これらのうち、②が最も大事であり、②の行為をした人が発明者になるべきですが、場合によっては①と③を担当した人も発明者になり得ます。
 これは、そのときの発明に対する実質的な貢献具合や重要な貢献具合を見て決めるしかありません。

 別の見方で発明者を特定する方法として、発明を①着想の提供と②着想の具体化の2段階に分けて考えるものあります。
 この場合、①着想の提供が発明となり得るためには、単なる思いつきや願望であってはなりません。
 着想自体が新たなものであること、又はその着想による技術的課題が新規なものである等が要求されます。

 例えば、自動車のエンジンを小型化したいだけでは、上記の①着想の提供には該当しません。
 もっと具体的に(実際にこの例が正しいかどうかはわかりませんが)、エンジンを小型化するためにシリンダー壁を構成するスリーブを廃止したい。すると、アルミ合金がむき出しになって、シリンダー壁がすぐに摩耗する。これを解決するため、シリンダー壁に摩耗対策で特殊なめっきを施せば良い、というのが①着想の具体化になります。

 そして、②着想の具体化では、実際にどのようなめっきをどの厚さで施し、仕上げ加工はどうすればよいか等を決めていく行為が該当すると考えます。

 こういった具体的な行為をした人が真の発明者となります。

 いかがでしょうか、特許の発明者についてご理解いただけたでしょうか。
 この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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