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開発ノートを記載しよう

【稼ぐ中小企業になるための知的財産情報】
 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「開発ノートを記載しよう」について説明します。

 中小企業といえども、何らかの開発や実験をすることがあると思います。
 そんなときは、開発ノート(実験ノート)を記載して保管することをお勧めします。

 理由は3つあります。

 1.将来の参考になる
 開発ノートを記載してそれを残しておくことで、後で似たような開発をするときの参考になります。
 同じ人が開発をするなら、まだ記憶に頼って過去のデータを参考にすることもできるでしょう。
 しかし、異なる人が開発をしようとすると、一から始めることになります。
 また、同じ人であっても細かなところは記憶が曖昧で、同じことを繰り返してしまうことがあります。
 そんなとき、過去のデータなどが参考にできるというのはとても助かります。

2.知財紛争が起こったときの助けになる
 知財紛争というのは、どこでどう起こるのか予測が付きません。
 2021年7月12日にNHKで放映された「逆転人生」では、「ファン付き作業服」を開発した市ヶ谷弘司さん率いる株式会社セフト研究所が、倒産の危機を乗り越えて商品をヒットさせた後に、大手企業のS社から侵害訴訟を提起された旨が描かれていました。

 NHKの一方的な情報のため真偽は定かではありませんが、放映中にファン付き作業服に関する株式会社セフト研究所の特許出願が35件、対するS社の出願が0件という内容からすると、S社の訴訟は言い掛かりのように思えてきます。
 (ちなみに、2021年7月18日現在で、株式会社セフト研究所の特許に関する公報を検索すると133件ありました。)

 しかし、言い掛かりのような主張であっても、資金力に余裕のある大手企業の方が有利になることがあります。
 知財訴訟は、一審だけでも数百万円以上の費用が必要になってくるからです。
 資金力にモノをいわせて、でっち上げのような証拠を揃えられることもあるでしょう。

 一方、資金力に乏しい中小企業は不利であるばかりでなく、特に知財に疎い中小企業は証拠の保全という概念がないことが多いのです。
 争いになってから、あの書類はどこにある?もう捨ててしまった?なんてことが往々にしてあります。
 そんな心配をしているとき、番組中で株式会社セフト研究所の従業員さん(お名前は失念しました)が、開発中に記載していた開発ノートが証拠として採用されたといっていました。

 これ、大ヒットだと思います。
 上記の侵害訴訟は株式会社セフト研究所が勝ちましたが、開発ノートがなければ結果がどうなっていたかわかりません。
 開発ノートは、こんなときの助けにもなるのです。

3.特許出願の中間対応に使えるときがある
 特許出願をして拒絶理由通知が来るときがあります(というか殆ど来ます)。
 その拒絶理由通知に応答するときの中間対応に、開発ノートが使えるときがあります。

 発明の構成で進歩性が否定されても、先行文献に対して顕著な効果があれば進歩性が認められることがあるのです。

 その顕著な効果を証明するために、開発ノートの写しを審査官に提出して意見書でその旨を述べます。
 結果として、特許査定率が上がります。
 (拒絶理由通知後に実験をすることも可能ですが、余分な手間を省くことができます。)

 では、どうやって開発ノートを書けば良いのでしょうか?
 詳細な書き方は文献やインターネットなどに出ていますので、肝心な点のみを述べます。
 それは、訴訟になったときに裁判官が証拠として認めてくれるように書くということです。

 具体的には、差し替え不可能なノートを用いて途中でページをちぎったりしない、消せない筆記具で書く、日付と記入者を記載する、実験器具や測定方法などは第三者が再現できるように書く、等でしょうか。
 後に公証役場で確定日付印をもらうともっと良いですね。

 いかがでしょうか、開発ノートの必要性についてご理解いただけたでしょうか。
 この記事が御社のご発展に役立つことを願っています。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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