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中小企業が見習うべきBYDの事業戦略

【稼ぐ経営者のための知的財産情報】

 弁理士の坂岡範穗(さかおかのりお)です。
 今回は、「中小企業が見習うべきBYDの事業戦略」をお伝えします。
※出願等のお問い合わせはこちらから http://www.sakaoka.jp/contact

1.BYDとは

 少し前に「「パクリメーカー」の汚名返上」との文言を含んだタイトルで、BYDが複数のネットニュースに掲載されました。
 その中からYahoo!ニュースのURLを記載します。
https://news.yahoo.co.jp/articles/aa8011a6e2e7d2ad5013d82142e8a5c7a8f58d2f?page=1

 BYDとは、中華人民共和国の電気自動車メーカーです。
 長澤まさみさんが、その広告に出演されていることでご存じの人もいらっしゃると思います。
 私も先日東京に出張したときに、都内でBYDの店舗を見かけ、そこで「ありかも、BYD!」という広告を見かけました。

 このBYD、創業は1995年とのことで、新興メーカーに該当すると思われます。

 個人的な感想をいいますと、「バッテリーや太陽光発電を購入すると、日本の富が中国に渡ってしまう。」と思っておりますが、そこはそこで見習うところは見習いましょう。

2.ネットニュースの内容

 ネットニュースの内容を極簡単に説明すると、およそ以下のようになります。
・1995年の創業当時、ニッケルカドミウム電池の生産を行った
・1997年のアジア通貨危機の頃、リチウムイオン電池の生産に乗り出した
 ここで「「非特許技術の活用」という独自の戦略で他社との差別化を図った」

 これらの記事から、中小企業が見習うべき事業戦略があると考えます。

3.見習うべきところ その1

 上に「1995年の創業当時、ニッケルカドミウム電池の生産を行った」と書きました。
 ネットニュースによると、1991年にソニーがリチウムイオン電池を商品化して以来、世間では「ニッケルカドミウム電池からリチウムイオン電池へのシフト」が行われていたようです。

 つまり、当時、少なくとも日本ではニッケルカドミウム電池が時代遅れになりつつあったようです。
 確かに、ニッケルカドミウム電池は私が子供の頃からその存在を知っており、1990年代では既に成熟された技術だったのかも知れません。

 対して、リチウムイオン電池はその性能は優れていたものの、設計や製造プロセスを厳格なものにしないと発火のおそれがあります。
 つまり、新参メーカーにとってはハードルが高過ぎるのです。
 実際、私の知人が互換品のリチウムイオン電池(海外製の安物と思われます)を使用して、火事になったことがあります。

 対して、ニッケルカドミウム電池はそこまでの厳格さは求められないようで、新興メーカーであっても参入し易かったと思われます。
 さらに、当時の中国ではまだ発展途上であり、ニッケルカドミウム電池であっても需要があったようです。

 だから、参入当初は敢えてハードルの低い、ニッケルカドミウム電池の製造を行ったようです。

 さらに、高価な設備が導入できないため、ニッケルカドミウム電池の製造では、1950年代の工場かといわれるくらい、人手に頼ったそうです。

 もっと書きますと、「1997年のアジア通貨危機の頃、リチウムイオン電池の生産に乗り出した」ときにも、クリーンルームの建設ができないため、「「クリーン箱」という装置を考え出した。」そうです。
 これは、従業員が手袋をはめて両手を左右から箱のなかに入れることで作業ができる」もので、いわゆるクリーンベンチの類いでしょうか。

 これらのことを中小企業に当てはめると、多少難しいことであっても、設備でも技術でも自分たちができることに落とし込んでから始めるといったことでしょうか。
 できないことを考えるより、できるように工夫して、それを確実に実施していくことが大事なのでしょうね。

4.見習うべきところ その2

 リチウムイオン電池の生産に乗り出したとき、「「非特許技術の活用」という独自の戦略で他社との差別化を図った」とあります。
 創業者の言葉として「ある新製品の開発は、実際60%は公開の資料から、30%は既存の商品から、5%は原材料などから、独自の研究は残りの5%しかない。」とのことです。

 これ、まさしくその通りです。
 新たな製品を開発するときに、たいていは既存技術も使用されています。
 つまり、0から作るのではなく過去の特許公報などを参考にすることができるのです。

 特許というものは、技術を公開する代わりに独占権を与えるというものです。
 さらに、出願時の書類には、その業界の一般的な知識を有している人が、公報を読んで同じように作れることが求められます。

 ですので、特許文献は技術情報の宝庫なのです。
 これを活用しない手はありません。
 もっとも、たまにその通りに製造すると上手く行かないよう、内容をごまかしているものもありますので、そこは注意が必要です。

 あと、過去の特許文献の技術を見た後に、その課題を解決することでより良いものが作れます。
 そして、そのより良いものを特許出願することで、知的財産権も得てブランドイメージも向上させることができます。

5.中小企業にもできそうな事例

 これは私が勝手に思っていることなので、実際はどうなのかわかりません。
 私の自宅は20年以上前に建てたもので、当時は珍しい免震構造でした。

 20年以上前ということは、当時の免震に関する特許は既に抹消されています。
 つまり、免震構造に関する古い特許は真似し放題なのです。

 免震構造の住宅をインターネットで検索すると、大手ハウスメーカーがその殆どを占めており、中小企業はなかなかお目にかかれません。
 免震構造と聞くとハードルが高そうに思えますが、中小企業においても過去の特許を利用することで他社との差別化を図ることが可能になります。

 このようなケースは、中小企業にもできそうな気がするのですがどうなんでしょうね。

 御社でも何かを開発するとき、先ずは、他社の技術情報を得るところから始めて見ませんか?

 この記事が御社の発展に寄与することを願っております。

坂岡特許事務所 弁理士 坂岡範穗(さかおかのりお)
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