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カレーを作れる子は算数もできる (木幡 寛)

 最近流行の「タイトルの奇抜さ」で目を引く類の本・・・かと思いました。が、内容は、思いの外充実しています。
 著者木幡寛氏の「現代の数学教育における問題に真摯に取り組んでいる姿勢」が見て取れます。

 氏によると、「基本=How to=方法」と「基礎=why=なぜ」は車の両輪だとされます。隂山英男氏の「百ます計算」に代表される計算の操作すなわちHow to重視の指導方法は、数学教育としては十分ではないとの考えに立っています。

 数学的な基礎・基本について、木幡氏は、数学者の秋山仁氏の主張を紹介しています。

(p5より引用) 「数学を理解する能力というのは、日常生活を支障なく過ごす能力と同じものだ」と規定し、次の四点を挙げている。・・・
① 靴箱に靴を揃えて入れることができる。
② 料理の本を見て、作ったことのない料理を作ることができる。
③ 知らない単語を辞書で引くことができる。
④ 家から学校までの地図を描くことができる。

 この4つの能力について、ひとつひとつユニークな問題を示しながら、その習得方法を示していきます。
 ①は、算数の基礎を学ぶ練習
 ②は、筋道を立てて考える練習
 ③は、物の仕組みを知る練習
 最後の④は、具体物を抽象化する練習です。

 それぞれの章に収録されている練習は、「算数」の問題というよりも、「理科」の実験であったり、実際手を動かす「工作」であったりと様々です。子供の好奇心を刺激して、「なぜ?」「どうして?」という疑問を抱かせ、さらにその理由を考えさせるための楽しい工夫に満ちています。

 この本を読んでも、ストレートに(現在の)小学校の「算数」がよくできるようになるわけではないでしょう。
 この本のメッセージは、「算数/数学」の「意味づけ」にあります。
 算数を、単なる「数の操作」ではなく、諸々の学問に取り組むにあたっての、「知識としての基本」「考え方としての基礎」であると意味づけているのです。



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