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大人の仕事術 (中島 孝志)

 中島孝志氏の言う「大人の仕事」とは「考えた仕事」のことです。

 氏によると、その「大人の仕事」は3種類あると言います。
 まずは、①「こなす仕事」。これは、自分の力で処理する仕事です。
 次に、②「さばく仕事」。これは、自分以外の人(上司・部下等の適任者)に任せる仕事です。
 最後は、③「つくる仕事」。これは、前2つとはちょっと質が異なります。自分で生み出す仕事です。何も新規ビジネスとは限りません。広く、あれこれと創意工夫する仕事だと言います。

 さらに、中島氏は、この「つくる仕事」の2類型を示します。
 一つは、make better=improve。改善・改革・改良といったものです。
 もうひとつは、make new=innovate。革新です。

 本書は、「大人の仕事」の具体例や、「大人の仕事」に近づくヒントが豊富に示されています。

 たとえば、「段取り」についての理化学研究所代表の大河内博士と部下の逸話です。

(p40より引用) ある時、博士はある若い男性にポットにお湯を満タンにして持ってきなさい、と命じた。すると、その男はこんなことをしたのだ。
 まず最初にポットに水を入れる。・・・
満タンになると、今度はそれをやかんに移し替える。そして、やかんの水が沸騰すると、それをポットに入れた。

 また、「不可能」についての以下のような整理も、その「不可能」を「可能」にするアクションのヒントとして役に立ちます。

(p152より引用) 不可能といった時、そこには次の三つの理由しかない。
①一人ではできない。
②いますぐにはできない。
③いままでのやり方(方法、構造、仕組み、システム)ではできない。

 不可能を可能にするためには、当然ですが、人並みはずれたエネルギーが必要です。ここぞという時の「集中力」です。

(p157より引用) 集中力とはいったいなにか?
「やるべき時にやるべきことをきちんとやりきる能力」と定義しておこう。集中力はタイミングを外したら、なんの効果もない。

 本書は、中島氏の経験にもとづくノウハウが非常に分かりやすく開陳されています。ある部分、表層的なところもありますが、シンプルかつストレートに本質を突いているところも、また、あります。

 たとえば、第34代合衆国大統領アイゼンハワー氏の言葉として紹介されている
「急ぎの仕事が重要であることはめったになく、重要な仕事が急ぎであることもめったにない」
というフレーズは、私も全くそのとおりだと思います。

 また、

(p29より引用) とくに「上司になればなるほど叱られる」ということも気分がよかった。・・・セールスという仕事では上に行けば行くほど責任をきつく追及される。それがフェアな感じがして、部下は安心して働けるのだ。

というコメントは、心しなくてはなりません。


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