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続 直観でわかる数学 (畑村 洋太郎)

「筆算」の思い込み

 先に読んだ畑村氏の「畑村式「わかる」技術」という本の中に「直感」と「直観」の話がありました。

 この本を読んで「チョッカン」で数学の難問がすいすい解けるようになるわけではありません。この本は、「解けるようになる」ことではなく「分かるようになる」ことを目指しているのです。

 「分かる」ようになるためには、「自分の頭で徹底的に考える」ことが大前提です。自分の頭を使わないで「分かろう」というのはあまりにムシの良い話です。
 自分で徹底的に考えてみると、いままで当たり前だと思っていたことが「どうして?」と改めて疑問に思えてきます。「(解くためには)こうするんだ」と理由もなく「手段」だけ覚えこまされていたことに気づくのです。

 このあたりのことの実例として、この本では、「どうして足し算・引き算・掛け算はお尻(1の位)から始めるのか?(割り算は頭からやるのに・・・)」との疑問を掲げています。

 そして、実際、頭(一番大きな桁)から計算する方法まで示しています。
 現実の世界では、1の位からコツコツと計算するよりも、大きな桁からザクッと計算する方が実用的な場合が多いものです。「有効数字」の概念を思い出すまでもなく、1000と2000の違いの方が、1001と1002の違いよりも影響が大きいのは当たり前です。

分数で割る?

 先に紹介した「直観でわかる数学」の続きです。

 畑村氏は、「わかるように教える」ということも大事にしています。
その例として「分数の割り算」が取り上げられています。

 「どうして分数の割り算は、ひっくり返して掛けるとできるのか?」
 畑村氏流の理解の仕方(教え方)では、割り算には3つの意味があると言います。

 ①△の中に○が何個あるか数える
 ②△を○個に分ける
 ③△と○を比べる
 で、「分数の割り算」は①の意味で考えます。

 たとえば、6÷1/3の例でいえば、6の中に1/3が何個あるかと考えるのです。その場合、いきなり「6の中に」と考えるのではなく、まず、「1の中に1/3が何個あるか」を考えてみます。すると「3個」あることが分かります。1の中に1/3は3個あるので、6の中だと「6×3個=18」となるわけです。

 こんな感じで、いままで学校で「理由や理解はともかく『方法』だけ覚えこまされたこと」を、「わかるように解説」していきます。

 さらに、そういった解説に使われている「図」が非常に効果的な役割を果たしています。
 先の畑村氏の著作でもそうでしたが、シンプルでありかつ的確に理解を助けるような「図(絵)」が豊富に載せられています。

 この本は、「数学がすらすら解けるようになるための本」ではありません。「数学(算数)を材料」にして、「わかったという状態に至るプロセスを描き出した本」「わかったという状態にするための工夫を開陳した本」という感じがします。

 その裏返しとして、「自らの頭で考えて疑問を持つことの大事さを訴えた本」とも言えます。


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