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わが子に教える作文教室 (清水 義範)

 この本はタイトルどおりにとると「小学生を対象にした作文教室」、すなわち、親が小学生のこどもに作文の上達方法を教えるHow To本です。
 事実、そのとおりの本です。が、それだけではない楽しい内容です。

 まずは、学校における作文指導に対してです。

(p146より引用) 子供に作文を書かせるってことの、いちばんの狙いは何だろうか。
・・・最も素直に考えるならば、子供に作文を書かせるのは、その子の文章による表現力を高めるためであろう。
・・・そこでの目標は、ちゃんと伝えられるようになろう、である。
 それなのに、作文の指導をしていると、ついつい脇道にそれた指導をしてしまいがちなのだ。作文を利用して、道徳教育を始めてしまうケースが目立つのだ。

 弟・妹について書いた作文に対して、「兄弟は仲良くしましょう。」といった批評を書くケースです。確かにこれはよくありがちです。

 さらに、このケースの発展形としては、こどもがその傾向を先取りして、自分の書いた作文を、(無理やり)親の目・先生の目を意識した優等生的な終わり方にもっていく場合を紹介しています。

 お父さんは休みの日家でごろごろしてばかりいるとか全然遊んでくれないとか散々書いておいて、「・・・。でも、やっぱりお父さんを大事にしようと思います。」とかの決まり文句でしめるパターンです。
 こどももある種「予想以上にオトナ」なのです。(決していいことではないと思いますが・・・)

 また、清水氏自身がなさっている作文教室のことにも触れています。
 作文指導を通した氏のこどもへの接し方には、“こどもの視線に合わせた優しさ”が感じられます。
 「こどもの自由な発想を決して否定しない」「まずは褒めて、『書くこと』を好きにさせる」等々、こどもの伸びやかさを大事にしようという気持ちが素直に伝わってきます。

 そういう環境で生まれてくるこどもの作文は、読んでいてものすごく楽しいものですね。この本の最大の魅力は、やはり何といっても紹介されている「小学生の作文」そのものです。こどもの感性には脱帽です。



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