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論理ノート (D.Q.マキナニー・水谷 淳)

論証について

(「論理ノート」p76より引用) 論証を健全なものにするには、その素材(内容)枠組み(構造)も健全でなければなりません。

 通常よく使われる三段論法の基本形は、以下の形です。
  すべてのAはBだ(大前提)
  すべてのCはAだ(小前提)
  ゆえに、すべてのCはBだ(結論)

 具体的には、たとえば、
  すべてのリーガ・エスパニョーラの選手はサッカー選手だ
  ロナウジーニョはリーガ・エスパニョーラの選手だ
  ゆえにロナウジーニョはサッカー選手だ
という感じです。

 素材(内容)が健全でない例は、たとえば、
  すべてのリーガ・エスパニョーラの選手はスペイン人だ
  ロナウジーニョはリーガ・エスパニョーラの選手だ
  ゆえにロナウジーニョはスペイン人だ
 これは、1番目の大前提の内容が「偽」です。したがって、たとえ論証の枠組み(構造)が健全でも結論(ロナウジーニョはスペイン人)は「偽」にしかなりません。

 他方、枠組み(構造)が健全でない例は、たとえば、
  すべてのリーガ・エスパニョーラの選手はサッカー選手だ
  久保竜彦はサッカー選手だ
  ゆえに久保竜彦はリーガ・エスパニョーラの選手だ
 これは、二つの前提を結び付けるものとしてそれぞれの述語部分をもってきているという構造の誤りです。

 上記のような分かりやすい例の場合は、その誤りが明々白々ですが、現実世界では結構2つの論証の誤謬がまかり通っています。
 まわりを注意するとともに、自分自身もそういう誤りを犯さないように自戒しなくてはなりません。

前提の説得力

(「論理ノート」p108より引用) すべての前提が直接かつ効果的に結論を支持する場合でも、それを全部使うのは望ましくありません。前提の数を絞れば、論証の焦点が絞り込まれ、より大きな影響力を持つようになります。
もう1つ注意すべき点があります。前提(結論を受け入れる理由)の中には、ある特定の聞き手だけに重い意味を持つものがあります。したがってそうした聞き手に対しては、まさにそのような前提を使うべきです。

 「論理ノート」という本は、「論理学」をベースにした実践入門書ですが、上記の記述はプレゼンテーションにも十分当てはまることです。

 プレゼンテーションは、聞く人を論理的に「完璧に」納得させる必要はありません。こちらの訴えたい点に「共感」させればいいのです。
 したがって、聞き手の腹に落ちさえすれば、これでもかと根拠を無理やり食べさせる必要はありません。すべての根拠を列挙する生真面目さよりも、聞き手が満足しさえすればいいという「合目的的」な割り切りが大事です。

 また、プレゼンテーションは聞き手に「プレゼント」するわけですから、聞き手が好きなものを贈らねばなりません。
 その点からも、聞き手が関心をもっていることに絞って根拠を開陳する(プレゼントする)ことは理にかなっていると言えるのです。


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