歳をとるにつれて性格が良くなって幸せになる⁈|58冊目『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門』
前野 隆司(2013, 講談社現代新書)
社員が幸福な会社は良いこと尽くし
僕の勤務している学校法人はグローバル・コンパクト・ネットワーク・ジャパン(GCNJ)に加盟しています。
GCNJでは分科会活動が行われているのですが、僕はサーキュラー・エコノミー(CE)分科会とwell-being分科会に参加しています。
9月末にオンラインで開催されたwell-being分科会では、慶應大学大学院SDM研究科教授で武蔵野大学ウェルビーイング学部長の前野隆司先生がwell-being入門のミニ講義を行いました。
前野先生は工学博士ですが、well-beingの第一任者として有名です。
ダイヤモンド・ハーバード・ビジネス・レビュー2020年2月号にはご夫婦の対談記事が掲載されています。
今回の講義でも、幸福度とパフォーマンスの研究の興味深い話をされていました。
社員が幸福であると感じている会社は、そうでない会社と比較して創造性は3倍、生産性、売上は30%高いのだといいます。
そしてさらに欠勤率は40%低く、離職率は50%低く、業務上の事故の発生については70%低いという結果があり、なんとも良いこと尽くしなのです。
これほど業績に影響を与えることがわかっているのならば、会社は何よりも社員を幸福にすることを考えるべき、と前野先生はいいます。
まさにその通りだと思いました。
詳しくは『幸せのメカニズム』という著書をご覧あれというので、他にも興味深い話がたくさんあったことだし、さっそく読むことにしました。
幸せの鍵は、やはり内発的動機づけかも
幸せには「地位財」型の幸せと、「非地位財」型の幸せの2種類があるといいます。
「地位財」型の幸せとは、所得の多さや、車や家などの物的財、社会的地位、会社での出世などから得られる幸せのことで、周囲との比較によってそれを感じます。
収入についてはある程度まで増えたところで、幸福度は上がらなくなるそうですが、それでも私たちはさらに多くの収入を望んでしまいます。
間違ったところにフォーカスしてしまうことをフォーカシング・イリュージョンといいます。
収入を増やすことでは幸せになれないにも関わらず、私たちはそれを過大評価してしまっています。
また「地位財」型の幸せは長続きしないのだそうです。
収入が増えればうれしく思いますが、すぐに現状に満足できなくなってしまうので、きりがないくらい次々と、さらに多くの収入を求めるようになります。
これを「快楽のランニングマシン」と言っています。
一方の「非地位財」型の幸せとは、健康、自主性、自由、愛情といった、形のないものによって得られる幸せのことで、他人との相対比較とは関係なくそれが得られるものです。
なんだか、外発的動機づけと内発的動機づけの話みたいですね。
外発的に動機づけられて物的な豊かさを求めることは、内発的な動機と比べてやはり楽しくありませんし、楽しくないから幸福感も得られません。
そして成果にもつながりません。
幸せの4つの因子
1,500名のアンケート結果から幸せの心理的要因を因子分析した結果、次の4つの因子が求められました。
「やってみよう!」因子
第一因子である「やってみよう!」因子とは、自己実現、個人的成長、コンピテンス(有能感)に関係する因子です。
勤勉な私たちは、成長や有能感といえばやはり仕事や勉強を想像してしまいがちです。
しかし必ずしも仕事や勉強に限定する必要はありません。
ましてや、相対的に誰かに打ち勝つことで幸福感を得るということでもありません。
それでは地位財型になってしまいます。
遊びでも趣味でもいいので、自分が面白い、楽しいと思う、自分なりの何かに対する有能感、個人的成長であって構わないのです。
つまり、そう、オタクだって全然OK。
打ち込めることがあることが幸せ!ということです。
「ありがとう!」因子
第二因子は「ありがとう!」因子です。
これは、人とのつながり、感謝、愛情、親切、人を喜ばせたいという要素からなります。
人に親切にしたり、大切に思ったり、何か良いことをしたとき、誰かの役に立っているなあと自覚したときにはたしかに幸せを感じています。
それから、家族や大切な友人のことを思い、旅行のお土産や誕生日プレゼントを選んでいるときって、なんだか幸せな気分だなあと思いませんか?
人を幸せにすると自分も幸せになります。
この論理は僕の仕事である学校寄付の促進業務にも活かせる考え方です。
「なんとかなる!」因子
前向きで楽天的で、嫌なことをひきずらないで切り替えが早い人は幸せな人です。
それはまったくその通りだなと思います。
外交的で、積極的に他者関係を作れること、自己受容できることも幸せになる要素です。
逆に、孤独感が高い人は幸福感が低くなります。
神経質な人は細かいところにこだわってしまい気持ちが安まりません。
楽観的な人と比較して幸せを感じづらいのではないかと思います。
「メタ認知」という認知があります。
自分を客観的に見ることができる心の働きです。
幸せから遠いと考えられる「神経質な人」ですが、自分のことを冷静に客観的に見られる、すなわちメタ認知の能力を獲得しやすいという点は長所であると言えます。
「あなたらしく!」因子
そして最後、第四因子は素顔のままでいられるという要素です。
それは依存せずに独立しているということであり、マイペースで人と自分とを比較せず、そして、人の目を気にしないということです。
制約から自由で、自己概念が明確であることもあなたらしさの要素と言えます。
「あなたらしく!」因子にもメタ認知は有効です。
人の目は自分が思っている以上に自分に向けられていることは多くありません。
他人が自分をどう見ているのか客観視できれば、それが自意識過剰だということに気が付くことができます。
すると人の目に振り回されずに、マイペースになることができます。
「老化」じゃなくて「幸福化」
偉くなったとかお金持ちになったとか、そういう地位財型の幸せにはいまだに縁のない僕ですが、それでも昔よりも今の方が格段幸せになった気がします。
鉄棒でいつのまにか蹴上がりができなくなっていたり、走るのがどんどん遅くなっていったり、体力的に老いていくことは不安ですし、ショックで、不幸だなと思います。
めざせる目標の幅は狭まって、老い先のこれからできることは限られてしまうので、どんどん夢のない将来となっていきます。
それでも昔よりも今の方が前向きで楽観的でいられるのは、歳をとるとともに脳の働きが変化して、細かいことが気にならなくなったからみたいです。
つまりそれも記憶力や緻密な思考力の低下という「老化」ではあるのですが、年長者のシステミックでホリスティックな知恵に置き換わっていったということなのだそうです。
よくわからないですね。
細かいところで課題があっても、全体的には良い感じ、ということです。
ですから、「老化」ではなく「幸福化」なんだと受け止めたら将来は案外楽しいものとイメージできます。
なんて感想を抱いてしまうことこそが、幸福化している証拠と言えるかも知れませんね。
また、性格と幸せの関係としては、「外交的」「楽観的」「ポジティブ」な人が幸せな傾向があり、主要五因子性格調査の「外交性」「協調性」「良識性」「情緒安定性」「知的好奇心」のいずれもが主観的幸福と正の相関が見られたという結果が報告されています。
つまり、「性格が良いほど幸せだ」ということのようです。
そして、この性格の傾向は年齢が上昇するごとに上昇するらしいです。
簡単にいうと、歳をとると性格は良くなっていき、そのおかげで幸せにもなるということです。
そういえば、若いとき嫌な奴だったあの人も、歳をとってだいぶ性格が良くなった・・・いやいやいや、変人が強調されてどんどん性格が悪くなるケースも少なくなさそうですよね。
「お疲れさま」禁止
もう一つ面白いなと思ったのがあいさつのことで、「お疲れさま」というあいさつをやめようという発想です。
お疲れさまというのは言葉の通りですが、仕事が終わって帰るときに、疲れていることを労うあいさつです。
ところが今では、帰るときに限らず、日常のあいさつとして、出会ったときに、「こんにちは」や「おはようございます」などの代わりに使う言葉になっています。
僕もけっこう「お疲れさま」と、ついついあいさつしてしまっています。
「お疲れさま」という言葉は、「私たちは疲れている」というメッセージをお互いの脳に刷り込もうという企み(誰の?)なのだと言います。
だから「お疲れさま」というのはやめよう!と。
素直な僕は、とても納得したので、さっそく「お疲れさま」というのをやめています。
同僚へのメールの冒頭に「お疲れさまです」と書くのもやめました。
じゃあ、代わりになんて言いましょう?
近しい人には「元気ですか?」「調子はどう?」なんてあいさつにするようにしています。
前野先生は「絶好調!」とあいさつされているのだそうです。
僕ももっと元気が出るあいさつを見つけられたらいいなと思っています。
最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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