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子どもたちを笑顔でメタバースに送り出すために|22冊目『図解まるわかり メタバースのしくみ』

波多間 俊之 著(2022 , 翔泳社)

それは本当に素晴らしい発明なのか?

かつて、高価で、重量があり、加工も困難であった金属やガラスに代わるプラスチックという素材が発明されたとき、人類の未来に貢献する素晴らしい発明であると誰もが思ったことでしょう。
しかし、100年のときを経て、天使だと思っていた存在が実は悪魔だったということに我々はようやく気がつきました。

満員電車の中でまわりの人にどれほど迷惑をかけているかなんてまるで眼中になく、スマホ操作に没頭するたくさんの人たちがいます。
そんな姿を見るたびに、果たしてこのスマホという発明は本当に人類のためになったのだろうかと考えてしまいます。

しかし、スマホによってたくさんの可能性が広がったことは事実です。
コミュニケーションの方法は多様化し、迅速で適切な連絡が可能となりました。
電車の乗り換えで迷うことはなくなり、はじめて行く目的地の地図を用意する必要もなくなりました。
音楽も聴けるし、運動や健康のサポートもしてくれます。

使い方は無限で夢のような機械です。
そう考えるなら間違いなく人類の歴史に貢献する発明だと言えるでしょう。

でも、その便利さは本当に人類のためになったのでしょうか?

便利なことは良いことですが、便利さに依存することによって人間の本来備わっている機能が低下するという心配はないでしょうか。
例えば、満員電車でスマホを操作する人は、まわりに配慮する能力が確実に劣化していると思います。
電話番号は覚える必要はなく、必要な知識はネットで検索すれば良いだけなので、おそらく記憶力も低下しているでしょう。
そして、中毒や依存症の問題。
性格や人格への影響。
そしてそれは個人の段階を超えて文化にも影響しているのではないかと心配になります。

メタバースは人類を救うのか?

ここまで書いてきたことは、ここ数年、なんとなく私が思ってきたことです。

短期的な便利さの視点から、中長期の人類への影響という視点に見方を変えたときに、善が悪になることはあると思います。

しかし、視座をさらにもう一段高くしたらどうなるかと考えてみました。

現在は物理的な現実空間とデジタルの中の世界とが混在していて、人々は物理的に自分の身体を自宅から別の場所へと移動させるその間に、スマホというデバイスを活用しており、心はデジタルの世界にあります。

人間は動物として、身体の維持のために必要な栄養分を摂取し、排泄し、適度な運動をして、生殖活動を行い、種を存続させることが必要です。

また、そうした生活行為を維持できるだけのコストを賄うために仕事をする必要があり、効率よく仕事で稼ぐためには学習をする必要もあるでしょう。

地球の環境を破壊してきたのは、人間が過剰な便利さを追求してきた結果であり、そしてそれは現実世界に帰属するものであるということに思い至ります。

食べる、寝る、排泄する、子どもを産んで育てるなどの哺乳類として不可欠なミニマムな活動は現実世界で行う必要があります。
しかし必要以上には物理的な空間で生きることを極力やめて、仕事も勉強も遊びも恋愛も、友だちとのコミュニケーションもすべてバーチャルの空間の中で行ったならばどうなるのでしょう。
現実世界での物理的な移動がなくなり、実存するモノの存在価値がなくなったならば、あるいは手遅れかと思っていた地球環境を改善することが可能となるのではないでしょうか。

そしてそのときに重要なキーワードとなるのがメタバースです。

スマホは人が物理的に移動することを前提にしており、持ち運びできるデジタルワールドとして価値があるので、人が移動をしなくなったならば、デバイスはスマホである必要はないのかも知れません。
しかし、デジタルの世界を身近なものにしたという意味での貢献性は疑いようがありません。
だとしたら、やはりスマホの発明は世界を救うためのものだったと言えるかも知れません。

WIREDを読むために、メタバースのしくみを読んでみた

長いまえおきでしたがここからが本のお話です。

うちのバカ息子が、マイクラやYouTubeなどのデジタルコンテンツにはまり、現実世界に興味を失っていることを毎日、目の当たりにして、しかし、頭ごなしにそれを否定してはいけない、世の中で何が起こっているのかを理解しなくてはと考えて、『WIRED VOL.44』『WIRED VOL.46』を読みました。

論文はなぜ読み難いのかといえば、読者に「論文を読めるだけの知識がある」という前提を求めているからです。
WIREDは論文集ではありませんが、デジタルに関しての背景や用語の知識がないと理解できない記事が多くあります。

そこで、WIREDが提言していることをもっと深く理解するために、メタバースに関わることをシンプルにわかりやすく書かれた本を読んでおく必要があると考えて読んだのが、この『図解まるわかり メタバースのしくみ』です。


Web3.0のキーワードはNFT、クリエイターエコノミー、DAO

 新しい時代に生きる人たちは、消費時代を過ごしてきた我々のような所有欲を持ち合わせていないようです。
現実世界に存在するモノたちにあまり魅力を感じていません。
代わりにデジタルの中に存在するモノに価値を見出しています。
デジタルの中では多くのモノは無料で取り引きされています。
これから先、もっとデジタル世界に軸足をおく生活が主流となるならば、そこで生活を成立させるための現実世界とは違う価値観が必要になってくるでしょう。
その一つの可能性がブロックチェーンなのだと思います。

WIRED VOL.44はWeb3特集号でした。
『図解まるわかり メタバースのしくみ』ではWeb3.0と言っています。

Web3もしくはWeb3.0とは何なのか、それ以前のWeb1.0、Web2.0とは何なのかから見ていきましょう。

Web1.0はインターネットの創世記です。
オープンな状態で、管理者もなく、誰にもコントロールされない、非中央集権的な環境にありました。

やがて2000年代になると、インターネット上の情報が巨大テック企業のプラットフォームなどによってコントロールされる中央集権的な時代となります。
それがWeb2.0です。

そしてブロックチェーンが登場したことによって、管理者が存在しない非中央集権的なスタイル、すなわちWeb3.0へと移行が進んでいきました。

そこで、Web3.0のキーワードとなるのはNFTクリエイターエコノミー、そしてDAOです。

NFTとは非代替性トークン(Non-Fungible Token)の頭文字をとったもので、簡単に言えばデジタルデータの所有権です。

デジタルの世界では作品は無料で取り引きされることが多く、アーティストやクリエイターはそれでは生計を維持することができません。
Web2.0を支配する巨大プラットフォームに依存せず、ファンと直接つながって利益を得ることができる状況、それがクリエイターエコノミーであり、Web3.0の2つめのキーワードです。

3つめのキーワード、DAOとはDecentralized Autonomous Organizationの頭文字をとったもので分散型自律組織と訳されます。
物事の進め方や報酬のインセンティブ設計などを非中央集権で運用する組織形態です。

メタバースの可能性

さて、メタバースは何をめざしているのでしょう。
今という時代はおそらく過渡期であって、現実世界で生きる人と、バーチャルな世界に軸足を移しだしている人とが共存している時代です。
そして現実世界とバーチャルの世界が逆転する時代はすぐそこまで来ているのではないでしょうか。

そのために必要なのは新しい価値観です。
メタバースで稼いでそのお金で現実世界のモノを買う、というのは旧世代の人類の発想です。
メタバース人はメタバースの世界に暮らし、メタバースの世界で稼いで、メタバースの世界で消費するのでしょう。

そうした世界の実現にはブロックチェーンは不可欠であり、その他にも相応しい仕組みや技術が必要です。
それは、イーサトリアム、スマートコントラクト、DAO、DApps、WebGLなどといった旧世代の私には聞き慣れない言葉たちです。
この言葉や概念の全部を覚えることはバッドメモリーの自分には困難なことですが、まずは一通り説明に目を通しておくことは大切だと考えました。

たぶん、この本を読んだことによって、WIREDに書かれていることの意味が、前よりはもう少し理解できるようになったのではないかと楽しみにしているところです。

メタバースのしくみ 読書メモ

↓こんな切り口でも書いていますので、よければ読んでください。

最後までおつきあいいただきありがとうございました。
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