見出し画像

もっとはやく、この本を読んでいたらよかった|26冊目『情報生産者になる』

上野千鶴子(2018 , ちくま新書)

定性調査の手法を学ぶためにオススメの本

私は、組織のビジョンやミッションに加えて、従業員個人がビジョンやミッションを持つことの重要性を証明する研究をしています。

多くの方々にアンケートのご協力をいただき、その結果をもとにして、昨年、日本マネジメント学会で自由論題報告をさせていただきました。

そして現在は、アンケートから得た問いの答えを求めて、アンケート回答者へのインタビュー調査を実施しています。

自分は定量調査が得意というわけではないのですが、定性調査となるともっと理解していなくて、どんな本を読むべきかと迷った挙句、グラウンデッド・セオリー・アプローチの本とか数冊を読んでみたりしました。

勤務先の大学の心理学の大橋先生が、大学のFDの勉強会で定性調査についてのお話をされていたので、自分の研究に相応しい定性調査の方法について相談をさせてもらったところ、「おそらくKJ法が良いのでは?」とアドバイスをいただきました。

そしてさらに、「KJ法を学ぶには上野千鶴子先生の本が良いと思う」と教えていただきました。

KJ法と上野千鶴子先生

KJ法って、てっきりワークショップで使われる手法というイメージでいたので、定性調査のための手法と聞いて意外に思いました。

上野千鶴子先生といえば、東大入学式のスピーチが思い浮かびます。
そして、勤務先の大学に著名な学長が在籍していたときに、上野千鶴子先生との対談イベントがあり、当時、広報職員であった私はそのイベントの運営を担当していたので、実は直接お会いしたこともありました。

女性学、社会学を専門とされている先生と思っていたので「KJ法のやり方を学ぶのに上野先生の本を読む」ということが、これまたピンときませんでした。

しかし、上野先生は社会学が専門で、大学や大学院で論文指導をされているわけですから、定性調査の手法に詳しいことは、よく考えたら全然おかしな話ではありませんね。

何はともかく、そんなこんなでたどりついたのが、この『情報生産者になる』という本でした。

KJ法のプロセス

現在、7名ほどインタビューを終了しておりますが、あと2名ほどインタビューを実施したら、いよいよ分析をしたいと考えています。

その分析の仕方を学ぶために手にした本なので、実際のやり方が説明されているところを読めば良いと考えました。
そして、第4章「情報を収集し分析する」から読みはじめました。

KJ法の「カード作り」「ユニット化」「カテゴリー化」「マッピング」「チャート化」「ストーリーテリング」「メタメタ情報の生産」というプロセスが説明され、なんとなくやり方がわかってきました。
さらには『うえの式質的分析法』としてマトリックス分析についての説明が書かれていました。

しかし、定性調査の手法というものは、自転車に乗るのと同じようなもので、頭で理屈がわかれば乗れるようになるというものではありません。
まずはやってみて、実際に体験しながら身につけていくものだと言います。

インタビューが終了し、文字起こしが終了次第、KJ法のプロセスに取り掛かろうと考えてワクワクしているのが今の状況です。

KJ法を実施した感想は、いずれ書きたいと思います。

読書は止まらず、結果的に論文とは何かを学ぶ

さて、ここまで読めば、ひとまずは今回の私の読書の目的は達成だったのですが、何しろ上野節が小気味良くて面白いので、読書を途中で止めることができず、そのまま本の最後まで読み切って、さらに第1章に戻り、頭から読みはじめて、もう一度最後まで読んでしまいました。

私は立教大学大学院、ビジネスデザイン研究科で学びました。
立教大学には50歳以上の方を対象とした、立教セカンドステージ大学というプログラムがあって、上野先生はそこでも指導をされていたそうです。
しかし、この本が発行された2018年には、すでにもう立教では教えてなかったらしく、私は2018年から大学院に通ったので、上野先生とは入れ替わりだったようです。
立教大学のキャンパスでお見かけすることはありませんでした。

本を読むと、上野先生の指導はだいぶ厳しかったようですが、上野先生のもとでならきっと良い学びができたのだろうなと思います。

KJ法のやり方さえわかれば良いというつもりで読みはじめたのではありますが、結果的には、論文を書く意味や意義、心構えから、問いの持ち方、テーマの決め方、そしてその研究にふさわしい調査の方法まで、論文全般について本を通して学ぶことができました。

もしも、修論を書く前にこの本に出会っていたならば、もう少しマシな修論が書けたかもと思ったりします。

しかし、これからも継続的に論文は書いていきたいと考えていますし、最初から満足のいく論文が書けなかったことが、逆に良い結果をもたらすことにつながると思っているので、今、このタイミングでこの本を読んだことの意味は十分にあると思っています。

情報生産者になる/上野千鶴子

最後までおつきあいいただきありがとうございました。
スキ♡の応援よろしくお願いいたします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?