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『地獄おっさん』②

白いセダンの中に、ハゲて小太りの中年の男が確認できる。相手の女の素顔は全く見えないが、長い髪をくるくるに巻いた、今時の若い女性の様に見える。
中年のおっさんが女の頭を両手でさわり、自分の顔に近づけると、ペロペロと顔を舐め回し、少し経つと自分の顔から離し、少し見つめ合うと、また自分の顔に近づけペロペロと顔を舐め回す。
マサキ達には薄っすらとだが、白いセダンの車内はこう見えている。
コウジ「あの二人、何やってんだ? 女はされるがままっぽいな」
マサキ「確かに。おっさん、ずっとペロってるだけじゃねーかよー。もうボチボチ次のステージへ行ってくんねーかなー」
コウジ「…ん?」
コウジ、何かに気付いたように、急に顔を窓に近づける。マサキの顔ととても近づく。
マサキ「うわ! 何だよキモチわりーな」
コウジ「…アレさー、なんかおかしくねー?」
マサキ「あ? 何が?」
コウジ「あの感じだよ。おっさんと女の感じ」
マサキ「…いや、意味が全然わかんない」
コウジ「角度、角度。…だってこっから見えてる感じって、なんつーか…あの女、運転席んトコにいる感じじゃねー?」
マサキ「おっさんの膝に跨っているからだろ?」
コウジ「いやいやいやいや。だったら、絶対おっさんの顔より、女の顔がもっと上にあるはずじゃん」
マサキ「ん? …あぁ…あぁ! 確かに。言われてみれば、なんか不自然だな。どっちかっていうと、おっさんの楽な体勢に、女が合わしてる感じか?」
コウジ「だろ。何だろうな?」
白いセダンの中では、先程よりおっさんのペロペロと舐め回す行為は、異様なほど激しくなり、舐めるだけでなく、吸いついたりもしている。
舐める、吸いつくの行為が、女の顎の方に行く。
その時、マサキ・コウジの二人、とても大きな声をあげる。
マサキ・コウジ「あ!」
マサキ・コウジは、今度は体を一気に仰け反った。
白いセダンの中では、おっさんが顎より下を舐めだし、首もとまで舌を這わすが、その首より下が無い。

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