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『地獄おっさん』③

マサキ・コウジ、目も完全に慣れ、その光景がはっきりと見える。
二人は涙目になり、硬直する。体を窓から離し、白いセダンから自分達が見つからない様に、リクライニングシートを倒し、隠れる。
マサキ「な、なぁ…」
コウジ「あ、あぁ…あれは、完璧に生首だよな…」
マサキ「…でも…でも違うかもしんねーよ。見間違いとか…」
マサキは体を少し起こし、運転席の窓ギリギリところに目をやり、白いセダンを除く。
白いセダンでは、おっさんが生首を自分の顔の上に持ち、切れた首元に口を付けている。首元から、色はよくわからないが、液体が滴っているのが見える。おっさんの顔や、服にも液体がついているのが見える。
マサキ「あぁ!」
マサキはその光景を見ると、また外から自分が見えない様に隠れた。体はガタガタと強く震えている。
コウジ「お、おい! マサ! マジかよ? マジなのか!」
マサキ「あぁ…あれ…マジで首だよ…」
コウジ「ふざけんなよー…」
コウジは白いセダンを覗くために、リクライニングシートから、体を起こそうとするが、マサキがすぐに止める。
マサキ「やめろ! マジ見んな! 俺らがここにいることがバレたら、殺されっかも知ねーだろ!」
コウジ「…」
コウジ、シートに体を戻す。
コウジ「なぁ、どうする? ずっとこのままの状態でいんのか?」
マサキ「携帯が使えねーんだ。警察とかも呼べねーからな…あのおっさんが、ここから出て行くのを待つしかねーよ」
コウジ「マジで気付かれなければいいな…」

○千葉県・山道の駐車場(30分後)

辺りは真っ暗になっている。
二人は息を殺し、身動き一つ取らず車内に隠れている。
おっさんの白いセダンの、エンジンをかける音がする。
コウジ「出んのか?」
マサキ「早くいけ!」
車が動き出す音がし、その音は少しずつ離れていく。
二人はゆっくり体を起こす。
マサキ「行ったな…」
コウジ「マサ! ソッコー! 早くオレらも出んぞ!」
マサキ、急いでエンジンをかける。すぐに駐車場から車道に出て、来た道を戻る。

○千葉県・山道・夜

車を飛ばすマサキ。
コウジ「取りあえず、でっかい道に出るまで、なるべく飛ばす感じで!」
マサキ「わかった! …もしあのおっさんの車がいたら、ソッコー教えてくれよ!」
コウジ「大丈夫! 大丈夫! もう大丈夫だよ! 取りあえず、なんか人がいそうな所に行くべ!」
マサキ「お、おう、わかった、わかった。取りあえずでっかい通りな」
二人とも、自分自身を落ち着かせる様に会話をする。
車は、スピードを上げて山道を走る。
大通りが出てくる。
マサキ「よっしゃー!」
コウジ「やったな! スタンドとか何か、店はあるだろ」
大通りに出て進む。
二人の表情は少し明るくなる。
少し走ると、見た事の無い名前のファミレスが出てくる。
マサキ「お! ファミレス! 入っていいか?」
コウジ「おぉ! 入ろう! 入ろう!」

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