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『地獄おっさん』④

○千葉県・ファミレス・駐車場

車を駐車場に入れる。マサキ、車を降りる。コウジ、車を降りる際、自分の携帯を見る。電波のマークが、かろうじて一本たっている。小さい笑みがこぼれるコウジ。
その時、震えた小声でマサキ、
マサキ「な、な、なーコウジ、あの車、おっさんのじゃねーよな?」
コウジは持っていた携帯を助手席に置くと、すぐにマサキが顔を向けている方を見る。
そこには白い四駆車が止まっている。
コウジ「うわ、ビビったー! お前ビビりすぎだよ。車ぜんぜん違うじゃねーか!」
マサキ「だよな? …よかったー。マジでよかった!」
マサキ・コウジ、扉を閉める。

○千葉県・ファミレス・店内

マサキ・コウジは店内に入る。
二十歳くらいの女性店員が出迎える。
店員・女「いらっしゃいませ。おたばこは吸われますか?」
コウジ「はい」
テーブル数は約20卓。
店内は、小学生の男の子・女の子のいる四人家族と、50代の夫婦が食事をしている。
マサキ・コウジ、窓際の喫煙席に案内される。マサキは、店内に背を向ける格好で座り、コウジは窓に背を向ける様に座る。
マサキからは、外の様子が伺えて、コウジからは店内の様子が伺える。
店員・女「ご注文が決まりましたら、お呼びください」
マサキ「あ! とりあえずコーヒー二つ」
店員・女「ホットとコールドはどちらにされますか?」
マサキ、コウジの方をみる。
コウジ「あぁ、オレ、ホットでいいよ」
マサキ「じゃあ、ホット二つで」
店員・女「かしこまりました。少々お待ちください」
女店員がカウンターの奥に引っ込む。
マサキ・コウジ、緊張の糸がほぐれて、その場でぐったりとする。
マサキ「とりあえずどうする? 警察行くか」
コウジは体を起こし、タバコに火を付けると、ポケットをまさぐる。
コウジ「(急に)あ!」
マサキ「なんだ! なんだ!」
コウジ、スグに落ち着きなおし、
コウジ「あぁ、そうだ。車ん中だ」
マサキ「何がだよ?」
コウジ「いや携帯、ドゴ行ったかと思って。さっきお前にビビらせられた時、車ん中に入れちゃったんだな。…取りあえず警察に連絡しよう」
マサキ「え? お前の携帯生きてんの?」
コウジ「さっき見たら、ここなら一本立ってた。ひょっとしたら、もう栄えてるトコに近いんじゃねーか?」
マサキ「マジか! 携帯生きてんなら、ラッキーだな! ちょっともう電話しようぜ!」
マサキは笑顔で身を乗り出し言う。
コウジ、その進言に笑って答える。
コウジ「まぁーちょっと待てよ。取りあえずコーヒーも来てねーから、まずは一服してからだろ」
マサキ「あぁ、そうだな」
マサキ、笑って言うと自分もタバコを出し、火を点ける。
店員・女「いらっしゃいませ。一名様ですか? おタバコはお吸いになられますか?」
入り口の方から、女性店員の声が聞こえる。
同じタイミングで、20代前半くらいの男性の店員がホットコーヒーを運んでくる。
店員・男「ごゆっくりどうぞ」
二人に背を向き、カウンターの方へと下がる男性店員。それと入れ違う様に、女性店員に連れられて、あの白いセダンのおっさんがやってくる。
コウジ「あ!」

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