焼き場にて
口元から読経がながれる
もの言わず燃えたぎる焼き場にて
圧倒的なあの世が降りてくる
惜別をぶち抜く感情のほとばしり
わなわなと肩が共鳴する後ろ姿
人目を払いのけ崩れ落ちる黒影
命に区切られた向こう側で
貴方は何の遠慮もなく燃えている
果たしてこんなことが許されるのか
一滴まで身ぐるみ吸いとられた海
まとったベールを引き剥がされた砂漠
棺やら壇やら壺やら哀れな置物たちよ
死というだけでは何も読めない
彷徨い続けた証をみながら
この世にあの世を支払い続ける
焼き上がったお骨は行儀が良い
表情を置き忘れた長箸を持ち
貴方は最後の熱さに包まれて
ここにはあるべきものはある
しかしいるべきものがいない
遠くの大鏡をふと見ると
映っているのは
君だった何かと
私のような人だった
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