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夕陽は赤い

夕陽は杖をついています
真っ赤に真っ赤に色付いています

バスを降りた年老いた御婦人
あの柔和な微笑みは
私に降り注ぐことが無いのです

駅の階段を駆け登る若者たち
乱れぬ息遣いから発せられる命は
私に降り注ぐことが無いのです

私はいます

しかし蹴られ続け蹴られ続け
ここに辿り着いた石ころでしょうか

それとも月日が積もった
置き忘れられた醜い人形でしょうか

あるいは風とか空気とか
そもそも見えないものでしょうか

泥んこ遊びをした坊主頭の子供たち
服をグショグショにして家路を急ぎます

夕陽はあの日も
そして今日もあんなに赤いのです

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