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巨人考

−此処はいったい何処であろうか−

朝、目覚めると、私は無造作に置かれていた。
解きようの無い涼しさと、結び目のいやにしっかりした網の中に。
鳥の鳴き声のうち鋭さだけが聞こえてくる。
遠くで文明の響きが虚ろに伝わる。

−此処は…−

よく見ると、壁には絵画、床にはテーブルがあった。
誰かがいるのだろうか。
だが、それらに色はなく、網はこの上なく鈍く光っている。
私以外は全て同じ明るさだった。

−此処はいったい…−

よく考えると、私以外にはひどい落ち着きがあった。
何千年も昔からの重さを持っていた。
私は何であろうか。
いったいいつ来たのだろうか。
現実は私しか動かなかった。

−此処はいったい何処であろうか−

思考をさらに引き上げるとこうなるであろうか。
私はかつてひどく疲れていた。
だが、死んではいない。
私は何処でも見えるのだ。

−私はいったい誰であろうか−

不明の原点にかえってみると、朝から何も変わっていない。
ところが、やがて私には黒い影が見えてきた。
物事を考える身持ちが縮まっていく。
黒い影は反比例して広がった。

−私は…−

網にしがみつくと、黒い影は視界を覆いつくした。
薄光を消し去り、虚ろな鉛色に変えてしまった。
だが、私以外は動かず、明るさは全て同じだった。
そして、涼しさは透明な回転をした。

−私はいったい…−

思い直してよく見ると、そのままを見せていなかった。
全てのものは貝殻を被っている。
すると、私も虚空のものなのか。
文明も悲しい潮騒に化していた。

−私はいったい誰であろうか−

この虚ろなしもべは何処から来たのだろう。
私はなんだろう。
不明の原点と私の脳裏が一致する。
だが、それらは永久に交わらないことを誓っていた。

鼓動が徐々に時空の彼方へと去っていく。
私は憤りと悲しみを感じて深い眠りに入った。

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