見出し画像

父の命日

父は日付の変わるころ
もういのちがないと
病院から呼ばれた

医師からは
「この夏は越えられない」と言われていた

父とはもっと話をしておけば良かった
わたしは父が苦手で
母を通してばかり
話をしていた

苦手とは父と私は似ているところがあったから

父と母には心のつながりがあり

強い強いきずながある

夫婦としては羨ましく思っていたが
それなりに葛藤はあった

母は父を尊敬し
父は母を恐れていた

でも母はそれを知らない

昨年の八月の初旬
「来たよ、来たよ」と誰かの声を聞いた
誰の声だか分からなかった

母が旅立ってから
その声の主を理解した

父である

いつもいつも私は父にお願いをしていた
「もう少しだけ、お母さんと一緒にいさせて」と
もっともっと頼んでおけばよかった
そして母のことをもっともっと大切にすればよかったと

命には限りがある 
今の私は人のことを羨んでいる
生きいてる

そのことを分かっていない
みんな、同じかなしみを
同じくるしみを抱えて生きている
いつかは必ずあの世に還るのに

息子にも迷惑を掛けた

もうそろそろ前を向かないと
父も母もわたしの側にいるんだよ

そう言われてもと
また堂々巡りを繰り返す

母のしあわせは
わたしがしあわせに生きること

何がしあわせで
何が不幸なのか
今のわたしには分からない

やっとの思いで息をしてる

昨日は花を買いに行く
仏花とピンクッションという不思議な花

いつだったか母が選んでいた
おしゃれな花
わたしも真似てみる

父と母の笑顔が見える気がした

よろしければサポートお願いします。