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雪が降る

母は北国の出身で
「都会の人はどうしてすぐに雪かきをしたがるのか?」と
いつも言っていた
「このくらいの雪なんか、放っておけばすぐとけるのに…」

昨日の昼から雪が降る
しんしんと

息子はラインで通勤に車が使えないと言ってくる

晩遅く、玄関を開け外を見る
雪は止んでいる
家々の屋根には雪が少しばかり積もっている

朝早く
外から雪かきの音が聞こえてくる

「めんどくせ~」と「布団から起きないと」とわたしの心がせめぎ合う

まだまだあんまり人に会いたくない

一度止んだ、雪かきの音
第二段が始まる

雨戸を開け、こっそり覗く
前の家のおじさんが暖かそうなニット帽をかぶって雪かきをしている

早く家に入ってくれないかな?

うじうじしないで覚悟を決める

ちょっと壊れた雪かきを持って
前の道に飛び出す

「おはようございます」
「いいの、持ってるね」
「いえいえ、少し壊れています」
おじさんと会話する

隣の家のおじさんもいる
「おはようございます」

みんな、周りの雪をどけ、アスファルトをきれいにしている

わたしも自分の家の前の雪をどけ
車庫から少し出ている車のお尻の雪をぬぐう

帽子をかぶったおじさんが
「もういいよ、これで大丈夫」というので
それを合図に家に入る

雪の後は心と身に堪える寒さがやって来る
左足の骨折のあとがじんじんする

テレビでは一昨年の冬の雪と比較している
一昨年はまだ母は生きていた
左足の血栓を痛がって
そんなことを思い出す 
あの日はわたしの骨粗鬆症の通院日だった

もう母のいない家
懐かしむ余裕もなく泪がこぼれる

置いてきぼりにするなよと呟くわたし

何回も死にかけるわたしには死は怖くない

そして何人もあの世に見送っているはずなのに
今回だけは違う
母は特別
落ち込んでは立ち上がり
落ち込んでは立ち上がり
そしてまた落ち込む

母に見送ってもらおうとしていたのか
甘えにも程がある

母に見送ってもらえるのはうれしいが
見送る側の立場を考えると
かなしくなる、さみしくなる、辛くなる、泪が止まらない

わたしが母を見送れて良かったと
最近はこんなことを思えるようになって来た

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