【第66回岸田國士戯曲賞最終候補作を読む】その6
6作目は蓮見翔さんの『旅館じゃないんだからさ』。
候補者について
蓮見翔[はすみ・しょう]
1997年生まれ。東京都東久留米市出身。日本大学芸術学部映画学科卒業。ダウ90000主宰。初の最終候補。
候補作について
昨年9月にダウ90000の第二回本公演としてユーロライブにて上演。
■時、場所
現代 レンタルビデオショップ
■登場人物
片山 レンタルビデオ店店員 25歳
塚田 レンタルビデオ店店員 26歳 片山に好意を寄せる
及川 レンタルビデオ店新人店員 23歳
亜子 レンタルビデオ店の客
藤川莉奈 片山の元恋人
高橋優斗 藤川の同棲中の恋人
栗原 及川の同棲中の恋人
吉岡 栗原の元恋人
■物語
とあるレンタルビデオショップ。片山と塚田は暇を持て余しながら、片山が持ってきた京都土産の話をしたり、スタッフおすすめ映画を選んだりしていた。そこへ新入りの及川がやってくる。最近、同棲を始めたばかりの及川だったが、早速恋人の栗岡が様子を見にくる。片山に自分の思いに気づいてもらえない塚田は及川に相談を持ちかけるが、栗岡がDVDを借りようとした際に返却していないDVDがあったことから、浮気の疑いが持ち上がる。栗原の元恋人・吉岡がそのDVDを持ってくるが、延滞金の7万円あまりの支払いをめぐって栗原ともめる。一方、片山の元恋人・藤川が久し振りに店に現れて塚田はやきもきするが、藤川が現在、同棲中であることが分かって片山はショックを受ける。会員証更新のために現在住んでいる住所が分かるハガキが必要となり、藤川の恋人・高橋が店にやってくる。
総評
実際の上演は未見だが、配信にて鑑賞済(感想ブログはこちら)。
蓮見翔さんの戯曲の優れているところは、単に長いコントに終わっておらず、ちゃんと演劇になっている点。本作で言えば、片山の藤川に対する未練、自分の好意に気づかない鈍感な片山に対する塚田のもやもやした気持なんかが時にほろっとさせられるぐらいだし、最後も何とも愛おしくなってくる。
戯曲の特色としては、句読点が極端に少ない。最後の句点はなく、読点もほとんど打たれておらず、これがテンポのいいやり取りを生み出す秘訣なのかも。
戯曲だと話者の名前が全部漢字二文字だから、その点はちょっと読みづらい。役者が演じているのを見る分には混乱することはないけどね。
好きな作品だし、受賞して欲しい気持もあるけど、さてどうなりますか。