ラジオドラマ「待ち合わせ」
語り :日常、平凡な毎日。そこに忍び寄る恐怖。恐怖、それはすなわち生きること。今回の恐怖それは・・・・・。
【牛丼屋】
(SE/牛丼屋の店内)
総理: (BGMレベルで)この状況は、国民生活及び国民経済に甚大な影響を及ぼすおそれがあると判断いたしました。本日は、この記者会見に先生にも同席いただいておりますが、先ほど諮問委員会の御賛同も得ましたので、特別措置法第32条に基づき、緊急事態宣言を発出することといたします。対象となる範囲は、関東の1都3県、東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、関西の大阪府と兵庫県、そして九州の福岡県であります。・・・
なえ :わ~とうとう出たわ~緊急事態宣言。あ~あ、当分の間、どっこもいかれへんやんか~仕事もなあ休まれへんのに。どないせえちゅうねん。
女1:ほんまやなあ。どないなるんやろなあ。
なえ:仕事行かれへんのやったら、ん~、在宅勤務言うても、でけへんしなあ。そや会議、どうすんねんやろ?
女1:え~、やる言うんちゃうの?俺は関係ないねん。医者に言わせると、手洗いマスクでうつらへんねんとか、どの医者が言うたか、変な権力をバックに、わけのわからん自信があるんちゃうの?
なえ: それが一番怖いのになあ? 男ってほんま、あほやわ。せやからあんな歳なっても、信用ないっていうか、嫌われてるのん、わからへんのかな。俺は俺はアピールして、おまけに、あの人と仲いいねんとか自慢するけど、そんなん自分と違って、虎の威やん、自己満足なだけで、後ろ指さされてんのになあ。
女1:ほんまほんま。ほんでほんまに風邪でも引いたら、おれ死ぬんや、もうあかん!とか一番に騒ぐねんで!ほんであかんあかん言うて、大騒ぎするねん。ほんまうっとおしいわ。
おっさん (一人芝居):俺、死ぬんや、なあ、なあ、おれ死ぬんや~~~。たすけて~な、助けて~、おれもうあかんのかなあ。
女2人: (おっさんの一人芝居を想像して)あ~さむさむ。寒いわ。
なえ: あの病気なったらな、ほら酸素が吸えんようになって、血が青くなるらしいで。こわいなあ~。
女1: そうなん?めっちゃ怖いやん。あのおっさんも顔、青くなったら、おもろいなあ。超人ハルクみたいなん。ほんで、あ~、おれも終わりやって騒ぎ出すんやで~。
なえ: もう、あのおっさんの話はええわ。ごちそうさん。「あ~おいち」かった。
女1: 青い血?ほんま、変なダジャレ言わんとって。うちもごちそうさん。
店員 ありがとうございました~。あれ?なんか片方の人、2重に見える。 (ごしごし)
なえ: ほな行こか。(SE/しばらく歩く)ほな、ここでな、ばいば~い。
女1 :ほな、またね~。
なえ :あ~あ、明日からどないなるんやろ。桜もきれいに咲く時期やのに。桜が散ったらGW。GWか~。あの人どうしてるんやろ?変な空の色やな~。黄色と紫色が混じったような。あら、ぐるぐる回りだしたわ。あらあら・・・。
(SE/スコン!(乾いた音で、落ちる音))
なえ:ぎゃ~!コロナ禍の禍は渦とちゃうで~~~
(SE/ぎゅいーんぎゅいーん的な音 5秒程度:タイムトラベル音) (無音3秒)
【家:朝】
(SE/さわやかな朝の小鳥の声)
男声(鼻歌): M1:(爽やかな朝イメージ曲)田中星児/ビューティフルサンデー
おかん :ヘイヘイヘイ イツア ビューティフルビューティふるさんで~っと。あんた~何やってんの時間やで~。待ち合わせあるン違うの?(曲FO)
なえ: あ~よく寝た。あれ?あれ?ここは?あれ~実家やん。 そやった。11時に駅のモニター前やった。今何時?
おかん: 何時って、もう9時やで。急がんと~。
なえ: ぎょえ~。
語り: 時は昭和63年。なえ、大学一回生の5月の日曜日。彼とのデートである。
なえ: おくれる~・電話せな、携帯携帯・・・。
おかん: 何、訳の分からん事言うてんの?せかいけいざい??
なえ :あ~ご飯食べてる暇ないわ!
男声(鼻歌): M2:(朝の忙しい準備のイメージ曲) 布袋寅泰/バンビー
おかん あんた、急ぎや~。晩御飯はイランのか~?
なえ: そんなん言うてるひまないわ!(SE/バタバタ・・)まあええわ、途中で電話したらええか~。ほな行ってきま~す。
おかん: 気いつけや~。晩御飯はどうすんねや~。
なえ :シェーキーズでピザでも食べて帰るわ~。
(SE/ばたばたばた・・・)
男声(鼻歌): (急いで走っている感じの曲)M3:爆風スランプ/ Runner
BGM~
おかん :(BGMレベルにかぶせて独り言)おさんどん、せんでええんか~ひとりでおいしいもんたべよかな~
【電車内】
(SE/電車の中)
なえ: あ~も~間にあうかなあ~
社長 :♪ (鼻歌で)ふ~ふふふふふん、ふ~ふふふん♪(鼻歌) M4:たてかべてつや/俺はジャイアン様だ(SE/ズンズンズン)
大島 :(標準語で)まってくださいよ、社長!、資料読んでるんですから。次のアポイントの相手の情報をインプットしなくてはいけませんからね(小声で)もう、社長ったらあんな金髪ででかいくせに馬鹿で我儘なんだから。。。あ、金髪ででかいから馬鹿で我儘なのか?
妙子 :あたしの書いた資料はいかが?
大島 :すごいよ!天才だよ!さすがだよ~、妙子さんにはかなわないよ。今度、ごはんでもいかが?
妙子: そうでしょ!あたしの才能と美貌。この会社はあたしの才能で持ってるのよ。
社長: おお、わが妹よ。
大島: げ?妹!(小声で)まじかよ、やばかった。でもこのバカ秘書、単純なんだから(クスクス)。ちょっとほめてやれば調子にのるんだ。
社長: なんか言ったか?俺の会社、俺のいう事を聞けばいいんだ!俺の妹の才能と美貌、俺の知性があれば、お前らはついてくるだけでいいんだ!、おう、小島、今月の集金をしたか?
大島 :大島ですって! 営業の奴らには言っときましたよ。コロナだからって、上納金は勘弁しないって。
妙子: 今から次の会社行くよ!、あそこには惚れ惚れするイケメンがいるのさ~
大島 :(小声で)ちぇ、またかよ~
社長: なんか言ったか?
大島 :何も言ってっす~、行きましょう行きましょう!
【駅】
(駅に到着)(SE/駅の雑踏・アナウンス音)
なえ: なんやあれ?ジャイアンとその仲間たちやん。あんなんパワハラやで。あんなんどこでもおったんやなあ。
そんなことより、電話電話。電話せな~。(SE/操作音/つながらない音)。あれー電波つながらへんやん。おかしいなあ~。やっばいなあ。
(SE/どん!)
なえ: 痛た~! (老人とぶつかったとわかって声のトーン変わる)大丈夫ですか~??
老人 :いたたた・・・なえ!
なえ: げ!。なんであたし名前。知ってるん!。気っ持ちわるいなあ。急いでるねん。邪魔せんといて!どうしよ~間に合わへん! ♪焦る焦るおれーたち、やん。ケンに嫌われたらどうしよ~。
そや、駅の掲示板に書いといたろ。黒板黒板・・・シティハンター呼ぶときとおんなじやん。XYZって書くんやったっけ?
男声:(鼻歌) (単純に連想からの曲)M5:TM NETWORK /Get Wild
(なえ、ケンを待つ)
【駅の光景】
女子高生1: なあなあ、ウチのおかんがな、面白い映画見たっていうねんけど、名前思い出されへんっていうねん。
女子2 :へ~そうなん。ちょっと一緒に考えてあげるから どんな特徴ゆうてたかってのを教えてみてよ
女子1: あんな、おかんが言うには、猫の形したバスみたいなんが出るっていうねん
女子2: それはトトロやな、トトロに違いない。
女子1: でもこれちょっと分からへんのやな
女子2 :何が分からへんのよー
女子1: わたしもな、そうおもって、トトロやんそれ、言うたけど、おかんが言うには、まあるいおっさんがが出るっていうねん
女子2 :それはトトロやな、やっぱりトトロや。まあるいなおっさんがトトロにみえるんやったら、それはだいぶんおかん、目ぇ悪くなってるわな。おっさんでてる映画なんか、そんなんないもんな。
なえ: 新しい会話やな。漫才みたいやな、あの子ら。
【売店の様子】
おっさん: じゃますんで~
店員 :邪魔すんねやったら帰ってや~。
おっさん: はいよ~、て、ちゃうやん。
店員 :はい、いらっしゃいませ~
おっさん: タバコや、マイルドセブンひとつ(300円出す)
店員: はいおつり、80万円。
なえ :こっちは古い会話してるな、おっさんら、新喜劇やん。
【出会い(再会)】
(SE/雑踏の音)
なえ: 間に合わんかったなあ・・・携帯も繋がらんし。どうなってんねんやろ?伝言板見てくれるかな~いつもやったら待っててくれてるのに。
なんやろ、この連絡が取れないっていう焦燥感、あせる、ドキドキする、あ~もうあかんわ~落ち着かへんわ~~!
(また、あの老人の姿を見る)わ!またおった、あのおじい!
老人 :(走ってきて)はぁはぁはぁ、ワシやがな、ケンや。忘れたんかいな?
なえ :なにいうてんのん?ケンはな~あんたみたいなおじいちゃんちゃうで。もっと渋くてカッコええねん。
老人: おまえ、今日デートやろ。ケンと。
なえ :気持ち悪いなあ。なんであんたが知ってんのん。
老人 :おまえ、携帯で電話しようとしてたやろ?
なえ :へ、携帯?・・・・・そや、これな?・・・・ん??あれ??
あたし、あれ?(自分の体を見回す)(周りを見回す)あたし大学生やろ?あれあれあれ?今日はケンとデートやろ?あれ??
あんた誰!!
老人 :ワシや、ケンや。ワシもお前みたいにこっちの世界に来たんや。今日この日、わしとお前は会えんかった。そらそうや、わしはお前に連絡しようとしたけど連絡もできへん。あの日から、それっきりや。それが気になって気になってな。
お前は若返ってるみたいやな。ワシはそのままや。ほれ、思い出してみい
なえ :なんやねんな。このおじい。わけわからんわ~。
男声:(鼻歌) M6:西城秀樹/傷だらけのローラ
なえ :(M5に乗って)あたしのケンはどこ?ケン!ケン!ケ~ン!(リバーブ効かせる)
(SE/ドンガラガッシャン!!)
(無音3秒)
【エンディング】
なえ :M7:国武万里/ポケベルが鳴らなくて
なえ:独唱
サビから出演者全員で合唱
語り :どきどきどき。早まる鼓動。恐怖、それを恐れないでください。 (淀川長治風に)
はい、みなさん、怖かったですね。このお話、いかにもFMラジオ、効果音、音楽あり、物語ありでしたね。ちょこちょこ漫才も入ってました。そんな中、いろんな小さな怖いことが起きてましたね。病気にならない根拠のない自信、自分だけがかっこいいと思っている男の怖さ、パワハラ、権力、焦燥感、、それからケンの正体、最後の曲の内容で分かりましたね。それを合唱、ある意味、怖かったですね。それから、昭和の感覚、懐かしかったですね。それではまたお会いしましょう。さいならさいならさいなら。
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