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専門誌掲載コラム「史跡問題!」

弊社の設備は・・・(この山にあります)・・・・・・しています。
この山は、2020年度NHK大河ドラマ「麒麟がくる」で山路和弘さんが扮した三好長慶(みよしながよし)の山城の跡で“続日本百名城”にも選ばれています。城跡では●●市教育委員会によって数年前から発掘調査が行われており、この時代にしては珍しく、広い範囲にわたって石垣が備わっていたことがわかりました。城全体に石垣を作ったのは織田信長の小牧山城が始まりとされていたそうで、これを数年さかのぼる大発見だそうです。飯盛城は織田信長によって攻め落とされたため当時の姿がほとんど残っていなかったそうです。
この発見をきっかけに市は国の史跡指定を目指して3年がかりの調査を行い、50か所で石垣を見つけたとのことです。その中でも居館である「千畳敷郭(せんじょうじきくるわ)」では推定で長さ30m、高さ3m以上の城最大の石垣が発見され、1.6mを超える巨大な石が使われていたそうです。この発見で、NHKの取材も受けたようです。
さてさて、弊社としては、この史跡指定が気になります。調べてみると、史跡とは「文化財保護法」で「貝塚,古墳,都城跡,城跡,旧宅,その他の遺跡で,我が国にとって歴史上または学術上価値の高いもの」のうち重要なもの、とされ文化財保護法第125条では、「史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、又はその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない」となっています。つまり、ある意味“国宝”になり、史跡指定区域内の現状変更や保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならず、特に掘削する場合、指定区域内の時は、文化庁長官の許可が必要となり、指定区域外の場合は文化財保護法第94条に基づく大阪府への通知(その後、試掘から始まる一覧の手続きですが、何か出てくるに違いありません)が必要となります。
さて困りました。現状、建物の建替えの予定はありませんが、なにせ築50年、コンクリートのコア抜きを行い劣化診断の結果では、あと20年程度は持つという判定ではありますが、20年後?には建替えが発生します。事業継続しながらの建替えとなると隣接地に建物を建て、設備を入れ・・・となると思いますが隣接地が史跡になっています。隣接地の土地購入もままならず史跡であることから、多分、かなりハードルが高いことでしょう。
この機会に設備の移転となった場合には、移転先を探すところから始めなければなりません。移転先が見つかったとしても、機材から電源設備、その他もろもろ整備が必要です。移転費を公費で賄ってくれるかもしれないと思ったところ「公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱」と言うものがあり、「第24条 (前略)当該建物等を通常妥当と認められる移転先に、通常妥当と認められる移転方法によって移転するのに要する費用を補償するものとする。(後略)」。この“通常妥当”の基準が弊社のような「止めてはいけない」的な特殊なものに対応できるのか、不安です(何で止めたらだめなの?というような素朴?な疑問をぶつけられそうです・・・)。
この件について、社内でもいろいろな意見があります。
・城マニア曰く「戦国時代の城のほうが文化財として、いや日本人として大事に決まっている!ウチなんかさっさと出ていくべきだ」
・クリエイティブ発想の方曰く「史跡指定される前に近隣の土地を買えばいいじゃないか?どうせ二束三文だろ?」
・引っ越し好き曰く「移転移転!楽しそう!」
・楽観主義者曰く「その時は、文化庁長官の許可をもらえばええんやろ?簡単やん」
・目先しか見ない者曰く「20年後の話なんか今しても仕方ないやん」
・悲観主義者曰く「20年後にウチの会社なんてないよ」
・技術関係者曰く「俺、20年後生きてるかなあ」 etc,etc。
さてさて、この先どうなる事やら。この話はまだまだ続きそうです。

(2021年3月掲載)

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