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"今は育児中だから"はただの言い訳だった。

8月になってからほとんど引きこもって自宅保育をしている私。今日は珍しく、一番暑いお昼の時間に外へ出た。

1歳になりたての息子と日中家で2人きりの時なんて、夫の大きいTシャツ一枚をワンピースみたいに着て、下はパンツ一丁。「のび太みたい」と夫にイジられる丸い黒縁メガネをかけて、おむつ替えと離乳食を繰り返し、気づけば夕方なんてことはザラ。

そんな私にしたら、

外に出る為に(一応)着替えて、
日焼け止めを全身に塗って、
息子のおでかけ準備もして、
格闘しながらベビーカーに乗せて、

日中に外に出ているなんて、それだけでものすごい達成感だ。

自宅から一駅だけ電車に乗って、
"ちゃんと息子を外に連れ出している自分"
にホクホクしながらスタバで新発売のフラペチーノを注文。

無給の子育て主婦にはちょっとお高いご褒美。700円くらいするストローベリーにチョコソースのかかったやつ。


注文カウンターの近くの広めの席にベビーカーを停め、根を下ろす。

ヒンヤリして甘い幸せの塊を少しずつストローで堪能していると、同じくベビーカーを押したママさんがお店に入ってきた。

赤ちゃん連れの人はいつも条件反射で見てしまう。パッと顔をあげる。

(ワォ…!)

すごく、すごく綺麗な人だった。

顔立ちが美人というのもあるが、それよりも"きちんと隅々まで手をかけている"ことの積み重ねで醸し出される、揺るぎない美しさだった。

メイクは薄いが、NIKEのキャップを深く被っていても分かる肌のツヤ。

スポーティでゆるいコーディネートでも、黒いサンダルから覗くつま先にはホログラムのペディキュアがしっかりと塗られている。

髪も潤ってサラサラ、ベビーカー周りの子どものグッズもセンスが良い。

圧倒された。見惚れてしまった。

そのママさんも恐らく私と同じアラサー。
子ども同じ、1歳前後くらいだろう。

同じ子育て中に、こんなにキラキラしてるママがいるという事実を突きつけられた瞬間だった。

"今は育児で大変だから" オシャレする余裕はない。

"今は育児で大変だから" 自分のことは後回し。

私は"育児“を最強の免罪符に、美しくあることを放棄していたのだ。

(最後に美容院行ったのいつだっけ…)

毛先を撫でると、ばさばさで硬い自分の髪にハッとした。

オーダーを受け取った彼女は、通路を挟んで向かいのテーブル席に腰を下ろした。

眠っている娘を抱っこ紐に入れて、すらっと伸びた姿勢でフラペチーノを飲む姿に拍手を贈りたい気持ちだ。

"私たちの人生に、美しくなくていい時間なんて1秒も無いわよ!"

隙のない美しさをまとう彼女は、そんなメッセージを全身で体現してくれてた。

ありがとう、大切なことを教えてくれて。
心の中で彼女にソッとお礼を言う。

こんもりと乗ったクリームから始まった私のご褒美は、気づけばプラスチックカップの底にたどり着いていた。

すくっと立ち上がり、暴れる息子を再びベビーカーに収めて、少し足早に家へ向かう。

明日、美容室に行こう。

仕事終わりの夫に息子を預けてでも。

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