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MATCHA香川トリップで考えた   (その1)

訪日メディア「MATCHA」代表取締役社長の青木優さんに誘われて、2泊3日香川県の旅に出かけてきました。これをきっかけにnoteを始めてみました。

三豊市のゲストハウス UDON HOUSEでの讃岐うどんづくり教室参加、香川で起業する若者との出会い、ベネッセアートサイト直島・内田氏の案内による大島(国立ハンセン病療養所)の見学、高松市のウォーターフロントの見学など盛りだくさんな3日間でした。


めったにない体験 -誘われて旅にでる-

今回の旅をひと言で表すならば-
「自分で選ばなかった旅だからこそ出会ったもの、こと、ひと」。

これまでのわたしがしてきた旅は、業務命令での出張を除けば、プライベートであれ研究出張であれ、行先も現地での行動もだいたい自分で決めたものでした。

ところが今回の旅は「自分では選ばなかった旅・ほぼおまかせの旅」です。これまでとはずいぶん違う旅になるのだろうな、という予想どおり、予期せぬ風景やひとやものごととの出会いに満ちた3日間になりました。


An unintended trip - 研究関心との符合

このような「自分では選ばなかった旅」はこれからの旅の形や観光ビジネスを考えるうえで、ひとつのキーコンセプトになるのではないか? このような旅に何か名前をつけたいと思い、旅の道中ずっと考えていました。

そして、旅が終わったあと、unintended(意図的ではない、偶然の)という英語の単語が浮かんできました。そこで、この旅にan unintended trip という名前をつけておこうと思います(もっとよい言葉が、できれば日本語の言葉が出て来ればいいのですが、とりあえず当面)。

そして、今、この時期にan unintended tripをしたことは、ここしばらくのあいだ考え続けている新しい研究テーマとの奇妙な符合があります。

Career Development in Holiday-making(旅行者のキャリア発達)が揺らぐ

かつてわたしは「旅行者のキャリア発達」を博士論文のテーマとして研究していました(Takai-Tokunaga,N. (2007) Beyond the Western Myth of the Japanese Tourist: Career Development in Holidaymaking, Unpublished PhD Thesis, University of Reading, UK)。

旅行者が観光産業との関係において「依存から自立へ、さらに自律へ」とシフトしていくプロセスに関心をもち、そのプロセスではマインドフルネス(mindfulness)という概念が重要な役割を果たす、という分析をしていました。

ここでいうマインドフルネスは、昨今話題の使われ方とは少し違う意味で、「既存のカテゴリー分け、価値体系を盲目的に受け入れるのではなく、自分で情報を精査し価値づけし、現実や自分の経験の意味付けをしていく」といったような意味で使っています。

そして、今回のお任せ旅のような形の旅は自分で諸々判断をせずに行く旅ですから、「マインドレスネス(mindlessness=mindfulnessの対義語)」の状態での旅に分類されます。

旅行者のキャリア発達の観点からは(言い方は悪いのですが)、未熟な段階にある旅の経験として分類していました。

このような考え方には、旅の意思決定や旅先での行動について自己決定権を持つことがより豊かな旅行経験につながるという見方が前提にあります。
そして、旅のボトムラインは旅の満足を最大化すること、つまり「旅の満足度=旅で得られた価値-旅への期待値」という考えがさらに前提としてあります。

言い換えれば、事前の期待値(わたしがこの旅で見たいもの、知りたいこと、やりたいこと、経験したいことは~~~~だ)をあらかじめ設定し得ることを前提にしていたわけです。

しかし、博士論文を書き終わったあと、数年後くらいから、いや、それはちょっと違ったかもしれないぞ…と思うようになりました。自分がどんな旅をしたいか、しっかりとわかっているような合理的な人間像は現実とは少しずれているのではないか…

「観光客の哲学」との出会い

わたしたちの旅を巡る状況はどんどん変化しています。

デジタルデバイスでタビマエ・タビナカ・タビアトのいつでもどこでも旅の情報にアクセスできる状況、SNSで見た画像から始まる旅、過去の検索履歴から勝手にプッシュで送られてくる各種の旅行情報…etc. 


わたちたちは旅人として、よりエンパワメントされた状況にあるわけで、選択肢も無限にある。しかし一方で、溢れかえる旅の情報や「おすすめ」にまみれて、「わたしはいったいどんな旅がしたいんだろう?」とわからなくことも多々あります。

そもそも100%自分の意思で決めている旅なんて、存在しえないんじゃないか? それに、旅にキャリアという概念はふさわしいのか?

そんななか、2年前の2017年春に思想家・東浩紀さんの「観光客の哲学」と出会い、研究者として目を見開かされる思いをし、「偶然が導く旅の体験」について真剣に検討する必要があると考えるにいたります。
(が、長くなるので、この話は別のnoteに書くことにします。)

意思と偶然

とはいえ、今回の旅は「まったくの偶然」で実現したわけでもありません。
起業家としての青木さんに関心を持ち、フォローしてきたことが、今回の旅に繋がりました。意思と偶然が導いた旅での出会い。これはまるで人生のようです。

「自分で選ばなかった旅だからこそ出会ったもの、こと、ひと」。

その中身について、順番に書いていこうと思います。(その2に続く、予定・・・)


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