見出し画像

小沢健二 高峰秀子 リンダはチキンがたべたい! 悪は存在しない 関心領域 鬼平犯科帳

オザケンのコンサート(5月9日、NHKホール)に行って来た。懐かしの80年代終わりから90年代始め、渋谷界隈をさまよっていたあの頃。兄が大のレコード好きだったので、大学生になっても兄のレコード屋さんのハシゴによくついて行った。兄はフリッパーズギターになる前のロリポップソニックから小沢さんと小山田さんの推しだったから、いち早くフリッパーズギターの音楽を聞かせてもらっていた。ある晩の渋谷で、「ルイ・フィリップのライブには、小沢さんと小山田さんは絶対に来るから!」と兄が言うので、私たち兄妹はルイ・フィリップのライブへ行った。2人もいた。予想通りに。私は小沢さんに渡そうと朝からバナナケーキを焼いて、小さなライブハウスの中の、すぐ近くのテーブルにいた小沢さんにバナナケーキを渡たした!と、30年以上昔の甘酸っぱい思い出。

先日の小沢さんのコンサートは、私の年代前後の人で満員。入り口でもらえるモノクロボックスの中には、ネクタイやホイッスルが入っていて、小沢さんの掛け声に合わせて会場の皆でホイッスルを吹いて、スチャダラパーも出演で盛り上がったコンサート。途中で、ずっと立ってなくてもいいよ、と、小沢さんや私たちの年代がそうも若くない部類に入ってきている旨を考慮するお言葉もあった。今やコンサートの中の歌は3曲しか知らないけれど、あの頃熱くなった思い出は残っている。息子(9歳)引き連れて。小沢さんの掛け声に合わせて、息子は最大音量でホイッスルを喜んで吹いていた(音量が調整できる、紙の羽のようなものが着いているホイッスル)。

モノクロボックス
モノクロボックスの中身


小沢さんは懐かしのとリアルの現代でも好きだが、高峰秀子さんは、映画と何冊も執筆されている本の中の高峰秀子さんがまず好きになり、リアルの高峰秀子さんは知らないものの、今でもずっと大好きな方。今年は高峰秀子さん生誕100周年とのことで、先月始めまで東京タワーで、大特別展「逆境を乗り越えた大女優 高峰秀子の美学」が開催されていた。高峰秀子さんについては、自分なりに映画と著書、高峰秀子さんの養女の斉藤明美さんの本で深めていたが、子役時代の映画は観たことがなく、展示会では少しだけ子役時代の映像や写真もあり、聡明さが際立つ持って生まれた品格のある女の子だったんだ、と高峰秀子さんの子役時代の映画も断然観たくなった。人として女性として憧れの人、高峰秀子さん。成瀬巳喜男監督の中の高峰秀子さんが1番好き(成瀬巳喜男監督の映画が好き)。繰り返し繰り返し観た「流れる」や「浮雲」、木下恵介監督の「二十四の瞳」の大石先生もやはりいい。高峰秀子さんの本もセンスもピカイチ。キッパリした生き方は孤高の人。これからも好きでいる、会ったことはないけれど、心の支えになってくれる人。日本橋三越の着物売り場でお披露目されていた、高峰秀子さんの着られたお着物の展示も見逃さず行った。紬のお着物のセンスのいいこと!!


愉快そうだったので、息子と。「リンダはチキンを食べたい」(監督・脚本 キアラ・マルタ。仏。2023年)は、思っていた通り、愉快でフランスのあるある感が散りばめられ(登場人物全員!台詞の言い回し!)、日本のアニメとは全く違うタッチのアニメ。色で登場人物が語られ、色が動き出し、色で心象風景が踊り出していく。子供達の公園のシーンの音は実際の公園で録音したそうで、どうりでスタジオ感無しの躍動感たっぷりなもの。皆がありもままの正直な感じがとてもいい。C’est la vie(セラヴィ)!正に、フランス的にそれが人生だという感じ。


どうなっていくのだろう、どうなっていくのだろうと思っていたら、いつの間にか終わってた「悪は存在しない」(監督・脚本 : 濱口竜介。日本。2023年)。結末は見えないけれど、続きをぼんやりだけれど、不審な影を感じてしまい怖くなった。ああいう終わり方があるんだ、どうしよう!?どんよりとした空気が漂い、遠い未来にはいろいろな展開が想像される。主人公の大美賀均が存在感あり。濱口竜介監督の作品にまた揺さぶられたい。


怖い映画だった。後味が悪くて、まだ消えない、これからもずっと消えなさそうな嫌な感触。「関心領域」( 監督 : ジョナサン・グレイザー。アメリカ・イギリス・ポーランド合作。2023年)。人間って、自分って恐ろしい部分があるのだとわかるから、尚更怖い。アウシュビッツ強制収容所の所長のルドルフ・ヘスの家族は、強制収容所と壁一枚隔てた屋敷に住んでいて、映画はその家族の暮らしを描いている。ヘスの奥さんの、自分の家族との生活を1番に大切にしたい気持ちもわからないではないのが、、。なにぶん、背景が時代が、立場が、悪が大きすぎてどんな言葉も出ない、、。言葉で説明できるような悪の所業を超えすぎて、もうもうどうしたらいいのか。。世界では、現在進行中の途方もない争いも止まない。目を背けず、どうしていくのがいいのか。。。この実話を映画にした「関心領域」は心地がすこぶる悪いけれど、各自が観て確かめることはできる。


鬼平は初めて観た。池波正太郎のエッセイが好きで、神保町界隈へ食べに歩きに行ったのは、かれこれ30年以上前になる!「鬼平犯科帳」( 監督 : 山下智彦 2024年 日本)。フランス人の友人( 25年来の友人。8年前からパートナーと東京と葉山に在住)が、私の映画好きを知って、「鬼平犯科帳観に行かない?」と、いつものように美味しいランチができるレストランも予約しておいてくれて(今回は、半蔵門のイタリアン、エリオ ロカンダ イタリアーナへ。まめに仕事柄もあり、いつも気になるレストランを予約しておいてくれる。2〜3ヶ月に1回くらいの頻度で大体フレンチを食べに行く)の、デートみたいな映画と食事を楽しんだ。松本幸四郎、いいでしょう(悪の面が少々薄めだったが)、どうしても柄本明がいなくてはいけなかったでしょう!現代的な全体的に美しい時代劇という印象。時代劇も初心者だけれど、市川雷蔵で少し鍛えてあるから、時代劇ももっともっと観てみたい、と、年を重ねて、時代劇好きにもなり、嗜好も変わってきているのを再確認。


この記事が参加している募集

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?