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ラ コリーナ近江八幡から学ぶまちづくり〜近江八幡の旅(2)

「近江八幡に行ってくる」
というと、
「あ、あのバウムクーヘンの?」
と、数人から言われた。

「たねや」「ラ コリーナ」「クラブハリエ」

…何も知らずに出発し、連れと合流後にいろいろ調べながら近江八幡へ。

そんなに有名なら、まあ行ってみようというという軽い気持ちで。

「せっかく行くなら、オープンと同時くらいのほうが混んでなくていいですよ」

と宿の方にアドバイスいただき、朝9時到着。

道路整理の方に導かれて広い駐車場を進む。「??お菓子屋さんよね?」

びっくりして撮ったもんだから指が…

車を降りた私たちを待ち受けていたのが


探せばトトロとかおりそう

ラ コリーナ 近江八幡でした。


〇ジブリのようなおとぎの国のような

言葉で言い表すのは難しいですが、たぶん老男女、国籍を超えて、気持ちが解放されるような空間が広がっています。どのくらいの時間いたか、忘れてしまいそう。
朝食をいっぱい食べた後だったので、カフェの利用などはしませんでしたが、十分にリフレッシュとエネルギーチャージができました。


建物が囲むのは、田んぼとあぜ道
開けたら絶対小人がおる。




〇お菓子はどこで売っている??

ところでお菓子はどこで売っているのか?

中枢的な

ここは、バウムクーヘン工房、カフェ、売店などが入っています。スタッフの方が多くて、お客さんが多くてもイライラが漂っていない。

バウムクーヘンが木材切り出し場のように並んでいる
歴々のパッケージの展示

あとは、敷地内の木々に紛れるように、小さな売り場が点在。

それぞれの店舗の雰囲気が違う。

ここでお菓子と共に並んでいたのが、こちらの本。買っちゃいました。

〇民間企業「たねや」の哲学とまちづくり

時代に即して業態を転換してきた「たねや」

著者の山本昌仁氏は、「たねや」の10代目。もともとお菓子屋さんなのかと思いきや、江戸初期の建築ブームのときは材木商、江戸後期になると名のとおり種を売っていたそうです(種なら農家が年に1回は買うだろう、との試算)。明治になって、お菓子屋さんに。お菓子屋さんとしては4代目になるとのことです。バウムクーヘンをはじめとした洋菓子は、4代目になってからの展開です。
何のために商売をするのか、守るべきものは何なのか。代々その精神が受け継がれてきたように感じます。

形式的な「伝統」に固執せず、引き継ぐべき「伝統」を守るには変化が必要

おじいさん、お父さんの代では、「たねや」といえば栗饅頭だったそうです。
今でも人気の栗饅頭ですが、時代に沿って、レシピは変えてきていると。
時代時代で、人の味の好みは変わってくるので、それに合わせて「おいしい」と思うものを作る。「主人がすべての味を決めるんや。それができんのやったら、ついだらあかん」と、先代から言われ続けていたそうです。
形や大きさも、時代で変わってくるはずです。
それでも「たねやの栗饅頭はずっと変わらずいつ食べても美味しい」と評価を受けるというのは、「お客様においしいと思われるものを作る」という伝統を守るために、日々変化をしてきたからこそ。そう思いました。

〇世代交代がスムーズだったのは「リレーランナーの一人」という共通認識から

お菓子の世界だけではなく、様々な企業や、政治、国家の世界にも全く持って共通なことだと感じたのがここ。

自分はリレーランナーの一人にすぎなくて、一時的にバトンを預かっているだけだと謙虚になればいいのです。そういうふうに考えられるならば、以下に次のランナーを育てるか、いかにいまより良い状態にしてバトンを渡すか、にしか関心が向かなくなります

「近江商人の哲学」

お父様が社長の時代は、ご自身は経営戦略も商品開発もいっさい口を挟ませてもらえなかったとのこと(そのくらいの覚悟でお父様がトップを担われていたともいえます)。カリスマ性があり、家業を企業に拡大する過渡期のリーダーであったお父様。
一方大きくなった企業、それを引き継いだリーダーはどうあるべきか。

スタッフがそれぞれの力を発揮できる場所を作る。「自分自身で考えて動く組織」を作り上げることこそ、次代にバトンを渡すものとしての役目

2000人を超えるという従業員を抱えながら、マニュアルがない。「一人一人ンおスタッフが自分の頭で考えてどうお客様に向かうかを判断してほしいから」。
ラコリーナのシンボルがアリなのは、一匹一匹は勝手に動いているのに全体でみると集団の利益にかなう行動になっているという「群知能」を持つ組織にしたいから。

決められたことをこなすだけでは、次世代は育ちません。自分の頭で考えて、全体の利益にかなう行動を、様々な立場でできていれば、自ずと上に立つ人も育っていくのではないでしょうか。

〇すべて自前で。外注しない

たねやの中では、商品開発はもちろん、パッケージデザイン、テナントの装飾、プロモーションなど、全て外注せず、社内で行っているそうです。


バウムクーヘンのパッケージの歴史


すべて自前でやる。アウトソーシングを避け、コンサルに頼らない。
なんと、ラコリーナの景観づくりも、材料の生産(一部)も、装飾に使う山野草の育成も。社内の部署がになっているそうです。

この松が大きくなったらどのような景色に?


張り巡らされた水路にはメダカも

今の行政は、職員の人員が減り、アウトソーシングやコンサルへの委託がとても多くなっています。
15年も前ですが、当時すでに「アウトソーシングしてもいざとなったら自前でできるノウハウを持っておくべきだ」という講義を聞いたことがあります。
外部の力を借りるとしても、根幹の部分は行政がしっかり担うべきで、マスタープラン作成などは特に、行政で行うことができたらと思います。計画策定の過程ですでに、課題認識からはじまるまちづくりが始まるからです。

〇読んでから行くべきか、行ってから読むべきか

本は、旅行から帰って、しばらくしてから読みました。
ラコリーナの施設だけではなく、近江八幡、琵琶湖周辺を含めて観てきたものがフラッシュバックして、とても興味深く読み進みました。

しっかり下調べしてから観光に行くのが、もちろん「取りこぼし」なく観るべきもの感じるべきものを持って帰れるとは思いますが、直感で感じ取ったものを後から答え合わせするという意味で、あまり調べずに飛び込み、その後深堀刷るというのもいいなと感じました(視察などの場合はもちろんしっかり下調べしていくべきです)。

近江八幡の河原で採取した在来の雑草(!)を移植したり、八幡山で拾ったどんぐりなどを植えたというラコリーナ。竹林整備や葦狩りに、地域にも出ていくスタッフの方々。

何年後かに、どんな施設,どんなまちの景観になっているのか、またぜひ再訪したいと思います。

わざわざ河川敷から移植したという雑草…!
屋根に植えられた雑草と八幡山の借景

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