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微艶小説

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艶のある小説群。しっとり気分の時に書いてます。 20.8.30.Kindleにて出版『微艶小説集』
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#記憶

【微艶小説】記憶のかけら

【微艶小説】記憶のかけら

私のことを見つけたあの子は
誰なんだろう

誰が仕組んだ悪戯なのか
運命の糸はつるつると

あの子と私を出逢わせて
私はあの子に発見された

お互いに忘れてしまっているだろう
けれど、きっと、

私のどこかに残されたsignを
あの子はちゃんと読み取った

私のことを見つけたあの子は
誰なんだろう

時間が経つにつれ
私もsignを感じる様になった

胸の奥の大釜を
ゆっくりとかき回されるような

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【微艶小説】ゾッとする

【微艶小説】ゾッとする

渋滞のバスに揺られながら
うとうとと薄く目をつぶる。

なんとも言えない湿気の多い朝で
珍しく空はどんよりとくもっている。

普段はない湿度に、
昔の記憶が肌に蘇る

このまま目を開けたら
そこはあのカウンターなんじゃないか?

テレビはついているか?
客は来ていないか?

振り返り、客がやって来ていないことを確認して、ふたたびまどろむ。

あの頃ももちろん楽しかった。
けれど、今はここがいいんだ

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