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人の叡智と自然が産んだ、清く流れる清流のようなお茶のおはなし。

春の気配が訪れはじめ、我が家の裏庭ではリスが駆け回り、キツツキが木をつつく音が聞こえてきます。

もうすっかり気分は春へと向かい始めました。

季節が変わるたび、その季節に合わせたものが無性に食べたくなります。

この季節は菜の花の、あの苦みを味わいたくなったり、やわらかいアスパラガスが食べたくなったり。

毎日飲むお茶も、季節にあったものに合わせたいと感じるものです。

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知らなかったお茶の産地

日本茶といえば、埼玉県の「狭山茶」、静岡県の「静岡茶」、京都の「宇治茶」、福岡県の「八女茶」など、有名な産地のお茶がたくさんありますが、それ以外にも、隠れた銘茶があることをご存じでしょうか。

これからご紹介するのは 岐阜県の「美濃 白川茶」というお茶。


このお茶を紹介する私も、実はまだこの地域には行ったことが無いのですが、調べていくと、とてもおもしろい地域だということがわかってきました。


良質なお茶をつくる茶園の条件


美濃といえば、明智光秀。
この記事を書いている2020年の大河ドラマ「麒麟がくる」では、美濃が舞台となっており、現在の岐阜県の南側にあたる地域のお話です。

美濃には「美濃焼」というものがあり、お茶に詳しい人も、そうでない人も、一度は耳にしたことがあるであろう『織部焼』の誕生地が、この美濃という土地だというので、ますますお茶への期待が膨らみます。


今回私は、岐阜県東白川村にある「茶蔵園(さくらえん)」さんがつくる 「清流」という商品名の煎茶をいただきました。


茶蔵園さんがある東白川村は、国内の主なお茶生産地としては北限に位置しているそうです。

お茶づくりには、その土地の環境が大きく影響してくるのですが、この茶蔵園さんの茶園は、傾斜が険しい山間部にあり、澄んだ山の空気、清らかな水に恵まれた地域です。

昼夜の寒暖差は厳しく、街の中心を流れる、白川からの霧で町が覆われてしまうほどだそうです。


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人間にとっては、とても厳しい自然環境ですが、茶蔵園さんによると、お茶の栽培にとっては絶好の環境だということ。


この類まれな環境から生まれる希少なお茶が、どんな味わいなのか試してみたくなり、早速、注文してみることにしました。



美味しくお茶を淹れるための秘密

届いたのは、深緑色で、艶のきれいな茶葉でした。

この茶葉をどんなふうに煎れたらおいしく頂けるのか。
お茶の作り手から、淹れてである私の手に回ってきたこのお茶を美味しく頂くために、心を落ち着かせて、ゆっくりとお茶を淹れてみました。

まずは、お茶の入ったパッケージの裏面にある通りの方法で一煎。

白い湯気が出るまで、やかんでしっかりと沸騰させたお湯を80度まで一度冷ますのですが、

やかんから、湯飲みに移して、まずは90度まで下げつつ湯のみを少しあたためる。

この時に、あまり急ぐと、思ったほどお湯は冷めないのでいつもより少しゆっくりとした動作でお湯を移していく。

器を移すたびに、お湯の温度は10℃ずつが下がるといわれているので、丁寧に、ゆっくりとお湯の温度を下げていきます。

温度計で測るのもいいけれど、この辺りに関しては、私は自分の感覚を信じています。

なぜなら、お茶は自由なものだから。

温度計がない場所でもお茶の温度がわかるように。
そんな思いも込めながら感覚にしたがって80度までお湯の温度を下げていきます。


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次に、茶葉の入った急須に、ぬるめのお湯を注いでいくのですが、茶葉は茎のほうに苦みが含まれているため、茶葉が粉々にならないように、ゆっくりと、なるべく急須の内側を伝うようなイメージでお湯を注ぎます。

すると茶葉はゆっくりと開いてくるので、急須の蓋を閉めて40秒ほど数えます。

そしてようやく、茶杯と呼ばれる湯飲みへそそぎ
一口飲んでみました。


お茶の味は1つではない

お茶は、熱いお湯で淹れると、少し苦みを感じた、キリっとした味わいになり、ぬるめのお湯で淹れれば、トロンとした甘みや旨味を感じるといわれています。

低めの温度で淹れるお茶は、口当たりがまろやかで、甘みと旨味の成分が抽出されます。

熱くて、渋めの、キレのあるお茶が好きな方は、
この淹れ方を苦手とする方も多いのですが、このお茶に関しては、ちょっと特別。


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まろやかで、口当たりがよく、甘みも感じる。
そのうえ、そのあとの後味は、まったりとせずにさらっと流れていく、さわやかさとキレも併せ持っていました。

想像していた味をはるかにこえる超える、こういうお茶は、いろんな淹れ方をためしてみたくなります。


さらにお湯を沸かし直して、集めのお湯90度くらいで淹れてみました。

今度は、さらにお茶の風味の輪郭がくっきりとして、苦み、渋みも感じます。

この淹れ方も、低温で淹れたときと同じように後味に苦みがのこらず、口の中を通り過ぎるように流れるようなお茶。

その苦みと渋みを甘いものと合わせると、抜群なマッチングでした!

まさに「清流」という名前の通りのすがすがしい流れるようなお茶。


日本人の愛してきたお茶は自分らしさを表現できるツールでもある

お茶の素晴らしいところは、淹れ手である自分自身が自分の好きなお茶の味に仕上げられる自由さがあることだと思います。

そして、大切な人にも、相手の好みに仕上げらえるおもてなしのできる飲み物だという事。


美濃 白川茶の「清流」は、選ばれた環境で栽培され、その厳しい自然環境の中で、茶園農家さんが手塩にかけて作られた「清流」は、

甘み、旨味、苦み、渋みと、幾重にも重なる味わいと、その名の通り、清く流れる清流のようなこのお茶が、春の訪れを一層楽しいものにしてくれました。



今回ご紹介した茶蔵園の「清流」はこちらです。


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