見出し画像

~自宅の『リースバック』の勧誘に注意!!!~

神奈川県横浜市戸塚区の女性ライダー弁護士西村紀子です。

 一人の弁護士として、一人のライダーとして、そして、一人の人間として、日々感じたり観察したりしたことで、皆様のお役に立つと思えることを、つぶやき発信していきます。

 本日は、一人の弁護士として、一人の人間として、
 "自宅の『リースバック』の勧誘に注意!!!
です。

 筆者は、日本経済新聞を購読しているのですが、最近、不動産業者による、自宅の
   『リースバック』
を勧誘する紙面広告をよく見かけるようになりました。
 さらに、ネットを見れば、
   年金だけの生活で不安な方に朗報!!
   住宅ローンが払えない方の売っても住める救済策!!
   自宅に住み続けながら売却で現金を得られる
   現金の使途に制限なし
   買い戻しも可能!!   
等々、バラ色の言葉が並ぶ広告が大量になされています。
   
 実は、このような広告を見て、筆者は、正直、とても複雑な想いをしているのです。
 そこで、今日は、この
   『リースバック』
について、つぶやくことに決めました。

 近年、自宅の『リースバック』が増加傾向にあるようです。

 ここで自宅の『リースバック』というのは、
   "所有する自宅を売却した後も住み続けることができる"
と宣伝されている仕組みのことです。  

 どのような仕組みであるかというと、自宅を不動産業者等の購入者に売却をする際、その購入者側と賃貸借契約を締結することを前提として売却をする、という仕組みになっています。売却後の居住のための賃貸借契約を締結するため、売却後も、賃貸借契約で取り決めた家賃を支払い続けることによって、"住み続けることができる"というわけです。

つまり、自宅を売却後は
          毎月賃料を支払うことで、自宅に引き続き住み続けることができる
というのです。

 皆様、このサービス内容を読んで、どのように感じられるでしょうか。
 聞いた限りでは、良いサービスのようにも思えるのかもしれません。

 そのためか、この自宅の『リースバック』が、高齢者世帯を中心に契約が増加しているようです。
 が、この自宅の『リースバック』を使って自宅を売却したものの、
  その後が全然想定した状況と異なったり
  メリットよりも遙かにデメリットが大きい結果になってしまったり、
などのトラブルも増えているため、国土交通省が、「住宅のリースバックに関するガイドブック」を公表するに至っています。

 『リースバック』の勧誘が自分自身や親兄弟知人にあった、という方は、是非、このガイドブックは確認をしておいていただきたいとおもいます。
 そして、できれば、自宅の『リースバック』を検討される方は、是非、弁護士の法律相談もされて、弁護士の助言をもとに不動産会社から十分な資料と説明を得て、じっくり考えてから、『リースバック』を申し込むかどうかの結論を出していただきたいとおもいます。

 
 さて、筆者が、自宅の『リースバック』の新聞広告を見て複雑なおもいがするのは、筆者自身が、不動産業者による強引な『リースバック』の勧誘で自宅を失いかけた被害高齢者の案件を扱ったことによります。

 詳細は書けませんが、そこそこ名の知られた不動産業者の職員が、巧妙に宅建業法の縛りを避ける形で被害高齢者とアポイントを取って自宅訪問してきたうえ、お世辞でも良いとはいえない条件の『リースバック』の契約書面に押印させようと数時間にわたって自宅に居座り、根負けした被害高齢者の方が、契約もしたくないのに押印してしまった、というケースでした。
 その条件がまたひどいものでした。

 不動産業者による買い取り金額  1000万円(SUUMO等では2500万円ほどで売られているマンションでした。買い取り金額が実勢金額の半額以下なわけです)
 売却後に居住するための賃貸借契約の家賃  月10万円(=年間120万円。売買金額1000万円では、8年ちょっとしかもちません。その被害高齢者の方は、高齢といっても70歳そこそこで、今の時代、あと20~30年寿命があってもおかしくないことは明らかです。売買代金を家賃で使い果たした後、一体どうしろというのでしょうか?

 直後に息子さんに連れられたこの被害高齢者の方の相談を受けた私は、直ちに、
   契約内容の問題
   営業担当者の勧誘態様の問題
   文書の写しすら交付されていないこと
   被害高齢者の方には契約の意思がないこと
を通告する文書を作成して、問題の不動産会社に送りました。
 印鑑を押してしまった、ということは、なかなか厳しい戦いになる可能性もあるのかもしれない、と危惧したのですが、幸い、おそらく後ろ暗いところのあるその不動産会社は、弁護士が入ったことでまずいと感じたようで、

   職員の勧誘には問題はなかったが、被害高齢者が契約をしない意思は明らかなので、契約不成立とすることで応じる、

という形で、ことなきを得ることができました(言い訳には納得できるものではないにしても)。

 世の中で勧誘されている『リースバック』が、すべてこんなにひどいものであるとは思いませんが、勧誘する側の不動産会社も慈善事業でやっているのではなく、自分たち会社の利益のためにやっているのですから、売る側がいいことづくめ、ということはまずありません。
 そして、実際のところ、上記のようなひどい条件のものの強引な勧誘だけでなく、

  ずっと住み続けられるという話だったのに「賃貸借契約」を更新しないから出ていけと言われている
  家賃を支払い続けていたら売買代金もなくなってしまい家賃を支払えなくなってしまった

などという、自宅を『リースバック』で売却したばかりに詐欺被害のような痛ましい事態になってしまう高齢者の事案も続出しているようです。 

 このような事態にならないよう、自宅の『リースバック』の勧誘にはよくよく注意をしていただきたいと想います。
 

 先に書いたとおり、『リースバック』の勧誘が自分自身や親兄弟知人にあった、という方は、是非、国土交通省のガイドブックは確認をしておいていただきたいとおもいます。

 勧誘を受けた方は、間違ってもその場で署名や印鑑はしてはいけません。
 業者を自宅に入れてしまい居座られてしまった場合には、
     「帰ってください!!
と3回言って、帰ってくれなければ警察を呼びましょう。
     「不退去罪」(刑法第130条後段)
という立派な犯罪が成立していますので、堂々と警察を呼んでください。

 そして、自宅の『リースバック』を検討される方は、是非、弁護士の法律相談もされて、弁護士の助言をもとに不動産会社から十分な資料と説明を得て、じっくり考えてから、『リースバック』を申し込むかどうかの結論を出していただきたいとおもいます。
(終)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?