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相続不動産の評価法を巡る最高裁判決の行方(2)

神奈川県横浜市戸塚区の女性ライダー弁護士西村紀子です。

 一人の弁護士として、一人のライダーとして、一人の人間として、日々感じたり観察したりしたことで、皆様のお役に立つと思えることを、発信していきます。

 本日は、一人の弁護士として、昨日に続き、相続税、具体的には、相続不動産の評価法についてつぶやきます。

 昨日の『相続不動産の評価法を巡る最高裁判決の行方(1)』で、路線価と実勢価格の乖離を利用した節税が広く行われ、“タワーマンション節税”などという言葉も生まれてきたことなどをつぶやきました。

 近年、このような状況に対して、国税庁は、課税を強化しており、路線価と実勢価格との乖離が大きいケースでは、個別に実勢価格を評価して、課税するということが増えてきているようです(財産評価基本通達の第6項が、このような個別評価を認める根拠となっています)。

 本件では、3億円の追徴課税をされた前記の相続人が、納得できずに、訴訟に踏み切りましたが、一審、二審は、国税庁の勝利。

 しかし、最高裁が、上告を認めて、弁論を開いたわけです。おそらく、一審、二審の結論が見直される可能性が高いでしょう。

 このようなケース、皆様はどのような感想をお持ちになるでしょうか。私自身はというと、あまりに多額の節税ができてしまうという状況の是非は別としても、実務で路線価評価が定着している状況でありながら、“個別に評価”されて多額の追徴課税を受けるというのでは、あまりに不意打ちになって平等性にも反し、法的安定性にも欠けることだと思わずにはいられません。節税自体は違法なことではないのに、節税を目的として大きな買い物をしながら、その効果が認められるかどうかがわからない、ということになってしまうからです。

 実際、昨日の上告審弁論でも、上告人である相続人側は、

 「「節税の意図があったとしても、路線価によらない評価手法を採るべき事情に当たらない」と主張。路線価と実勢価格の隔たりが是正されていない現状にも触れ、「狙い撃ち的に特定の相続財産を、不動産鑑定によって評価することは平等な取り扱いに反する。恣意的な課税は許されない」と述べた。」(日本経済新聞3月16日朝刊)

とのことです。もっともなことだと思います。

 国は、課税を適切に行いたいと考えるならば、路線価と実勢価格の乖離を縮める等により適切に対処し、不意打ちとならない平等な課税ができるようにするべきでしょう。

 4月19日の判決が注目されるところです。

(続く)



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