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相続不動産の評価法を巡る最高裁判決の行方(1)

神奈川県横浜市戸塚区の女性ライダー弁護士西村紀子です。

 一人の弁護士として、一人のライダーとして、一人の人間として、日々感じたり観察したりしたことで、皆様のお役に立つと思えることを、発信していきます。

 本日は、一人の弁護士として、相続税、具体的には、相続不動産の評価法についてつぶやきます。

 2月28日付日本経済新聞朝刊で、「相続不動産、評価法争う 「路線価否定」の課税巡り最高裁判断へ マンション節税に影響」として、

「不動産売買による節税策や不動産取引に、大きな影響を及ぼす可能性がある司法判断が年内にも示される見通しとなった。マンションの相続を巡る税務訴訟で、最高裁が3月15日に弁論を開く。高裁までの相続人側敗訴の判決を見直す可能性がある。専門家は「どの程度の節税なら許されるのか基準の提示を期待したい」と話す。」と報道されていた最高裁の弁論が、3月15日に開かれ、判決が4月19日に出されることとなりました。

 今回の事案は、相続人が父親から相続した不動産であるマンションの評価を巡るものです。

 原告である相続人は、東京都と神奈川県のマンション計2棟を2012年に相続。この2棟のマンションは、相続の数年前に被相続人が購入した際の価格は約13億8700万円。原告は、相続税申告にあたっては、これらのマンションを、相続税納税の実務で使われている「路線価」に基づいて約3億3000万円と評価し、銀行からの借り入れもあり相続税額をゼロとして申告したとのことです。

 これに対し、国税当局は、これらのマンションの不動産鑑定の評価額は約12億7300万円であり、路線価による評価は適当ではないと判断。不動産鑑定の評価額が「時価」にあたるとして、原告である相続人に対して、約3億円を追徴課税したのです。

 このような評価の差が発生するのは、相続税や贈与税を算定するための不動産の評価の実務での指針となっている「路線価」と実勢価格との間に乖離があることが原因です。土地については「路線価」は実勢価格の8割程度とされていますが、マンション等になると、その開きは一層大きくなるのです。

 そして、この「路線価」と実勢価格との乖離を利用しての節税が多く行われ、「タワーマンション節税」などという言葉も生まれることとなっているのです。

 (続く)

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