ホスピタリティ感性で育てるお互いさまの街 ペイ・フォワード記事 Vol.62
【お互いさまの街の温かさがみんなの心に染み入る日】
2024年10月25日、お互いさまチケット考案者の故吉成洋拍さんの誕生日に、ついに待ちわびていた企画を開催することができました!元モスフードサービス専務取締役田村茂講演会・お互いさまチケット研修会です。
https://note.com/noriko_c_o/n/n60f54171f92d
田村さんの基調講演では、お互いさまチケットのより深い理解と実践に繋がるようにするために、『恩送りにつながるホスピタリティ感性~感謝される仕事とは』というタイトルで、ホスピタリティを軸にお話をしていただきました。ここでいう「ホスピタリティ」とは一体どういうことを指しているのでしょうか?
【ホスピタリティで「人間貢献・社会貢献」】
モスバーガー(以下、モス)では、お客様一人ひとりの感情に寄り添った個別対応をする「ホスピタリティ」を提供しています。これは標準的な接客である「サービス」とは一線を画すものです。なぜなら、マニュアルに書いていないことでも、「あなた」としての「お客様」の幸せを判断基準にし、スタッフが心からこうしてあげたい!と思ってその想いがついつい行動になって現れることが「ホスピタリティ」なのです。「ついつい」というところがみそで、頭で考えるのではなく、心が「何か」をキャッチしたら、行動に移してしまう、この感性が染み付いているということなんですね。このホスピタリティ感性を通して、モスの企業理念である「人間貢献・社会貢献」を具現化されているのです。
今回の講演ではモススタッフや田村さんが経験したたくさんのホスピタリティにまつわるエピソードをお話ししてくださいました。その一つ一つが私の心の琴線に触れ、新しいエピソードを聞くにつけ胸が熱くなりました。もちろん涙腺も緩みっぱなしで、こんなに氣持ちよく泣けるものだろうか、というくらい涙がこぼれてきます。
【温かい涙の生まれ出る源】
それにしても、なぜこんなに田村さんの感動エピソードに涙が出てくるのだろう、と不思議に思っていました。『外食マネージャーのためのぶれないプライドの創り方』という田村さんが書かれた本を読んでいるときに、その答えに氣が付きました。
それは、「お客様の期待を裏切らないことが判断の基準」である、と堂々と言い切っていることでした。また、主語は「一人ひとりのお客様」という表現もありました。
これを読んで「自分たちの業績のためではなくお客様のためになることを判断の基準にして行動してくれる会社が本当にあるんだ!」ということへの喜びと感謝と安心と希望の涙だったのだということに気がつきました。
しかもその「お客様」とは、いっぱひとからげの全体を指す言葉ではなく、「あなたのため」という個として大切にしてくれている、愛情の込められた存在認識です。
この捉え方は、お互いさまチケットや、私たちの日常生活に置き換えて考えても同じです。字面だけ、頭の理解として「お客様のために」とか、「あなたのために」とか言うことはできます。でもどこかで、一つ一つの言動は自分の利益を守ろうとして相手を出し抜いていないか?本当に「相手の幸せ」が判断基準になっているか?胸に手を当てて聞いてみると、全ての行動において「はいっ!」と答えることができるだろうか・・・。これは大変シンプルな基準にも想えますが、実践するのには鍛錬が必要だと感じます。
私としては、自己犠牲をして相手に尽くす、というのもしっくりきません。自分を犠牲にしている、と感じてしまっている時点でそれは相手への奉仕になっていない気がしてしまいます。「あなたの喜ぶ顔が見たいから、喜んでお役立ちさせていただきます!」というような、相手の喜びが自分の喜びと一致するような感性を持ちたいです。お互いさまチケットに関わってくださる皆さん(スタッフの皆さんやチケットを贈りたい方)がこういう感性を磨いていただくきっかけとして、お互いさまチケットを活用してほしいと思います。
【「風の人」と「土の人」の生み出すホスピタリティ実践】
こういうわけで、田村さんが紹介してくださるエピソードの数々を聞いていると、本当に「お客様のお役に立つ」「お客様のためになる」ことを判断基準にして、実践している方のお話を聴くと胸が熱くなるのだと思います。これは、エピソードが腹落ちし「私もこのようなあり方をしたい!」共鳴したからこそ起こる現象です。
そして、田村さんは「心温まる臨床例」を伝える人が重要だともおっしゃっています。これは「風の人」「土の人」という表現にも表れています。「土の人」とは、水はけがよく、作物がよく育つような栄養たっぷりな土という「現場」で働く人、そして、その現場でたくさんの心温まる事例を体験する人でもあります。
一方で「風の人」は、様々な人と出会い、異なる分野について学び、心を豊かにします。そしてその人の心の琴線に触れたエピソードを、風となって「土の人」たちの元へ新しい栄養となるようにたっぷりと浴びせてくれる人のことです。
この「風の人」と「土の人」がそれぞれの役割を果たし連携することで、その会社の風土が生まれる。なるほど、だからこそ唯一無二のフード(風土ふうど)の完成(感性)なのですね!!
【自分ならどうする?矢印を内に向ける心掛け】
過去に受けたセミナーで「何か話を聞いたら、『では、自分はどうか?』と問い直しましょう」という話を聞きました。この言葉が心に残っており、それ以来、学んだことを自分の生活、仕事、課題に落とし込んだらどう解釈できるか?と考える習慣がついています。
今回の田村さんのお話をお聞きしていて、たくさん共鳴することがありました。特に今回は「相手の幸せが判断基準」「相手のお役立ちになることが喜び」というホスピタリティ感性を自分に深いところまで落とし込むとどうなるか?を考えてみました。
【教育現場で実践したいホスピタリティ】
最初に思いついたのは、学校でのホスピタリティ感性です。高校教諭として復職してから、授業の中で「愛ある行動をしましょう」と生徒に伝えてきました。
最近、生徒との会話の中で、「愛=感謝」という認識が出てきました。これは、「お客様のお役立ちをして感謝される仕事をしよう!」というモスのホスピタリティ感性と通じるところがあると感じています。
つまり、生徒も私も人として、他の人に喜んでもらうことをすることが自分の喜びとなる。こういう関係性を気付けたらお互いに心地よい心の居場所が生まれますよね。
教員としての仕事の面で考えると、「生徒の様子をよく観察して、その時々の生徒にぴったりの関わりをし、生徒に心から喜んでもらえるようにする」と捉えることができます。実はこのことについて、最近猛省していることがあります。
【他人の痛みの分かる人に】
田村さんのエピソードの中に、肩書きの前に他人の痛みの分かる人であれ〜「正邪の正、必ずしも是ならずや」〜というものがありました。自分の仕事上の立場(肩書き)での行動をする前に、相手が表せないでいる本当の氣持ち、痛みに気付くことが大事だということです。相手の痛みが分かっていないのに「正」を示しても、それは「指摘」になってしまいます。相手にとって「それは分かってはいるけど納得いかない!」という心持ちになり、関係性がこじれてしまいます。
私はこれまでの人生でこのことがもとで人間関係がうまくいかないことがありました。これまで青年海外協力隊でマレーシアに行っている間学校教育を離れたり、育児休暇を取ったりしている間に、様々な人がいるのだからそれぞれの事情があるし、答えは一つではない、と何度も感じてきました。だから、「こうすべき」という考えはもうやめた、その「つもり」でした。
【「つもり」と「らしさ」】
しかし落とし穴があったのです。
田村さんの言葉によると「つもり」と「らしさ」というものがある、ということです。やっている「つもり」と、その人「らしさ」として滲み出てくるのとでは違うのだということですね。これを聞いて恥ずかしくなりました。
これまで生徒それぞれの事情を汲み取って接しようと努力を続けていましたが、ある時復職したてで生徒の性格をまだ読み取れていなくまだラポール(信頼関係)がとれていない状態でやりとりし、そっぽを向かれてしまいました。プライドの高いライオンの尻尾が他の動物たちの邪魔にならないように正してあげようとしたら噛み付かれた、という状況です。いくら正しいことを伝えようとしてもその子の心には届きませんでした。
最近このことを乗り越えようとしていただけに、田村さんの「正邪の正、必ずしも是ならずや」、そして、「つもり」と「らしさ」の話にはハッとさせられました。
そういえば、青年海外協力隊でマレーシアに派遣されボランティアしていた時も、最初は楽しいことばかりで何をやっても波に乗っている氣分でした。ところがそのうち同僚と話をしているうちに誤解が生まれて苦しい時期が続きそれを一歩ずつ乗り越えていく。深い学びがあったよなぁ、とあの頃のマレーシアでの経験が想い出されました。
【いい話を自分の成長の肥やしに】
復職してから日々生徒とのやりとりが楽しくやりがいを感じていたある日、ボタンの掛け違いから生まれた今回の出来事。もちろん、うまくいかなかったことは反省しています。ただ、人間誰しも完璧ではない、ここから学んで成長させていただこう、という謙虚な氣持ちでこの出来事を今後に活かそうと捉えています。
「お客様に喜んでもらう」を学校教育に読み直した時に、生徒のよくない行動を見逃したりおべんちゃらを使う、ということではありません。生徒の事情や氣持ちや性格をよくよく考えた上で、氣持ちよく成長していけるような手助けをする、そういう感性を磨いていけるよう、日々自己研鑽を積んでいきます。
みなさんは田村さんのお話を聞いてどう感じましたか?どう日常生活に活かしたいですか?
もっと田村さんワールドに浸かってみたい!という方はこちらを読んでみてくださいね。心に響く言葉のオンパレードですよ。これを読めばお互いさまの感性も深まっていくかもしれません。