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買わない暮らしで楽しむ子育て〜あさひくんから生まれたおのゆきちゃん〜 ペイ•フォワード記事Vol.53


全ては一冊の本から始まった


私も子どもたちも読書が大好きなので、家にはたくさんの本があります。本が好きで、買うとどんどん増えるから、図書館から借りてこよう!と思っていても、そばに置いておきたい本もあるもの。
『ペレのあたらしいふく』は、自然と読者が一体となれるようなファンタジー溢れる文と絵で知られるエルサ・ベスコフの作品で、私たちのお気に入りの一冊です。

スウェーデン出身の彼女は、森の中の妖精が人間と共に過ごしているような感覚になれる絵本をたくさん作っています。15年ほど前にバックパックでヨーロッパ旅行をしたときに訪れたスウェーデン。のどかな雰囲気を楽しんできました。当時はいけなかったスウェーデンの森への扉を、彼女の絵本が開いてくれます。

エルサ・ベスコフについてはこちら↓

『ペレのあたらしいふく』は主人公のペレが新しい服を作るために、自分の育てている羊の毛を刈るところから物語が始まります。その後の行程は、家族や近所のいろんな人のお手伝いをする代わりに、その人たちの力を借りながら新しい服に仕上げていく物語です。

自分のしてほしいことを形にしていく力を借りるために、自分もできることをその人たちのためにするペレの姿は、素朴で学びに満ちています。このお話の内容は、私が最近興味を持っている、ギフトエコノミーそのものだといえそうです。真の愛の姿を描いているからこそ、この本は長い間多くの人たちに愛されているのではないでしょうか。

少年を応援する羊や近所の人たちの温かい協力

子羊の世話をする男の子、ペレが羊や近所の人たちの協力で、青い服を手に入れるまでの楽しいお話です。ペレは上着が小さくなってしまったので、自分で羊の毛を刈り取った後、すき、紡ぎ、織り、染め、仕立てを家族や近所の人たちの助けをかりて上着を作り上げていきます。それぞれの工程と、そのお礼にみんなの仕事を手伝うペレの姿が、美しい自然を背景に生き生きとみずみずしく描かれます。

福音館書店の書評より

「絵本ナビ」さんのみんなの声・レビューから、主人公ペレや彼が住んでいる時代背景が分かるのでこちらも載せておきます。

大好きなこの本を寝る前の絵本タイムに読んでいたときに、娘が「私もペレみたいに羊の毛でお洋服を作ってほしい!」とおねだりしてきました。こういうことは、その氣になっているときにするのが吉!早速羊の毛を手に入れて娘の服作りプロジェクトを始めることにしました。

ステップ1 羊毛を手に入れる

まずはペレが羊毛を刈ったように、羊毛を手に入れることからです。羊を飼っていると言えば、宮城県岩沼市にあるひつじ村!とすぐに思いつきました。ひつじ村や、その管轄をしているJOCA東北さんにはいつもお世話になっています。
例えば、福島の友人と行っている和んぴプロジェクトのほぐし(浴衣の糸を切る)作業をお手伝いしていただいています。

和んぴプロジェクトのメンバーでJOCA東北さんと打ち合わせする前に、ひつじ村さんを訪問させていただいたことがあります。
ここは東日本大震災で津波被害に遭った場所。人が住めない地域になったけれども、かつてここに住んでいた人たちがこの土地にやってきて人々と交流できるような機能を持ち合わせているのです。羊さんたちにご飯をあげる体験もできますし、野菜畑も隣接しているので、牧歌的な雰囲気がお好きな方にはぴったりの空間です。

元氣のいい羊さんの鳴き声に及び腰

今回は、ひつじ村でGW期間に毛刈りイベントをした時の羊毛が羊毎にまとめられて取ってあるということで、譲っていただけることになりました。羊の種類によっても毛の色や質が違うので、どういうものを使いたいか職員さんと話し合いながら選んでいただきました。それがこちら!


あさひくんの毛です。あさひくんはもう羊小屋に帰ってしまってこの日会うことはできませんでした。服ができあがったらあさひくんに報告しに行きたいです。ありがとう、あさひくん!

ステップ2 羊毛を洗う

YouTubeで毛糸の作り方を調べると、まずは羊毛の汚れを取るための手順が紹介されていました。人の毛も湿気によってくるくると癖付いたりするように、羊の毛も温度変化に弱いのです。だから、羊の毛にとって熱すぎもせず冷たすぎもしないくらいの水温に調節してから、もまないようにして上から優しく押し洗いします。この過程で、毛についた羊さんのおしっこや土や草などがある程度落ちてくれます。

自分の力で羊毛を洗う子どもたち

比べてみると一目瞭然。左がまだ洗っていない状態の毛で、右が二度洗って乾かした毛です。茶色の汚れと共に、特有の臭いも落ちていました。

どんどん変化する羊毛にワクワクです

羊毛には羊さんの脂がついているので、この作業をしていると手がハンドクリームをつけたようにすべすべになります。天然のハンドクリームですね。

ステップ3 羊毛をほぐす~カーディング~

次は、羊毛の毛をほぐしなめらかにすると同時に、毛の流れをそろえる工程です。カーダーという針のようなものがたくさんついた道具を使い羊毛をほぐしていきます。

娘の通っていた園から道具を借りて2人で作業。とにかく子どもはなんでも自分でやってみたいもの。羊さんの毛ってこういう葉っぱがついているんだね、などと話しながら作業しました。
この作業は一人でしていても楽しいですが、やっぱりお友だちとお話ししながらするのが一番!自分が楽しいと思うことはたくさんの人とすることで楽しさが何倍にも膨らみます。この日は、以前にギフトエコノミーを実施した記事でも紹介したオーサムポートプロジェクトの中の交流会でカーディングをしてみました。滅多にできない経験なので、皆さん真剣です。毛並みをそろえる人、カーダーでとれなかった草を手で摘まんで取る人、羊の肉の話で盛り上がる人などそれぞれです。

昔羊を飼っていたというお坊さんにカーダーの使い方を学ぶ人たち

ステップ4 いよいよ糸紡ぎ!?

さて、羊毛がきれいになってきたところで、次は糸を紡ぐ段階かな?とワクワクしていました。ところが、草などのゴミが少しでも羊毛についている状態で糸にすると、洋服になったときにちくちくすると聞き、しばし作業の手が止っていました。
どうしようかと思案していたある日、娘のお友だちがソックスモンキーをもっているのを見つけました。それは、東日本大震災の復興の歩みなのかで生まれた愛らしいキャラクター「おのくん」からヒントを得たものでした。そのかわいらしさに、娘は一目でファンになりました。

そこで、あさひくんの羊毛と、娘のもう使わない靴下を使ってソックスモンキー作りをすることにしました。当初の予定の服作りとは違ってしまいましたが、娘も納得の様子です。いつか服も作りたい!という想いも温めつつ・・・。

人生初の一から手がけた羊毛作品は双子のソックスモンキー

そしてできあがったのがこちらです!

おのゆきちゃんとおのルルちゃんが見つめています(目のシールもいただきものです)

娘と息子との靴下から、二匹のかわいらしいソックスモンキーが誕生しました。写真の左はおのゆきちゃん(娘用)、右はおのルルちゃん(息子用)です。娘が「おのくん」から名字をもらって命名してしていました。娘は、羊毛を手に入れ、洗い、すいて、靴下に詰め込み、縫う過程を全て目にし、ほとんどお手伝いをしました。それがあってか、生まれたばかりのおのゆきちゃんを愛しそうになでて、おうちごっこで遊んでいます。
こういう姿をみると、「買わない子育て」でおもちゃを買わずに、おもちゃ作りの過程もまるごと遊べた実感があります。材料も道具も全ていただいたり、貸してもらったりしました。さらにはたくさんの方に手伝ってもらいました。おのゆきちゃん、おのルルちゃんの誕生に関わってくださった全ての方に心からの感謝と愛を伝えたいです。今度、関わってくださった皆さんにおのゆきちゃんが挨拶に行くと思いますので、その時は遊んであげてくださいね!

ギフトエコノミーの中でのやりとりを通して養われる心の豊かさ


プチプライスのファストファッションの登場により、ワンシーズン着たら次の年にはそれを捨ててまた新しい流行の服を買う、という消費行動が加速した時期がありました。それはどんな経済状況であってもデザイン性のよい服を楽しめるという意味で広まりを見せたのかなと推察します。私も利用したことがあります。

その裏では遺伝子組み換えの綿花を生産されられる地域が、元々の農業とかけ離れた農業をすることで土が壊されていきます。あの時の私はそのことに気が付いていなかったのです。

私は子どもたちと、「服は羊さんから毛を分けてもらって色んな人に道具や知恵を借りたり手伝ってもらったり、植物から色を分けてもらったりすることで、手間暇と愛情を込めて作ることができるんだね」、ということを共に経験したいのです。

そうすることで、きっといつか、「地球と私は一つ。私が生きるために必要なものを地球から借りるし、私ができることを地球のためにする。地球が喜ぶことが私の喜び。」という感覚に繋がっていくのではないかと信じています。

ペレとおのゆきちゃん、はじめましてのご挨拶

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