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モキュメンタリーホラーの意味性。ネットに何を齎すか?創作でないホラーって何なんだろうか?

なんかすごいモキュメンタリーホラー掘り下げますよ!ってタイトルですけど、モキュメンタリー知識から紐解いて掘り下げようって感じではなく、そもそもモキュメンタリーホラーって何なん?って人に向けても読める感じで書きたいと思ってやってきます。

最近、モキュメンタリーホラーやPOVホラー(主観視点ホラー作品)などが流行ってる感じがします。

ホラージャンルに詳しくない方に分かりやすく説明すると、『ホラー』は怪談だったりジャパニーズホラーやスプラッタホラー様々あるんですが、怪談はお話で、ジャパニーズホラーは陰惨とした陰のあるホラー、スプラッタホラーはホッケーマスク男がチェンソーを持って追っかけてくる様な最近だと「Dead by Daylight」に出てくる様な奴らに追いかけ回されるホラー作品、とそんな感じで細かくジャンルがあったりします。
その他にも様々なジャンルがあるのですが、最近は『モキュメンタリーホラー』というジャンルが流行りをみせています。
そもそも「モキュメンタリー」というのは、ドキュメンタリータッチに作られた偽ドキュメンタリーの事を「モキュメンタリー」と呼び、ホラー以外にもモキュメンタリー作品は作られているんですが、『モキュメンタリーホラー』とはドキュメンタリーの様に作られたホラーという、ん?ドキュメンタリーのホラーって何よ?って感じの立ち位置の作品となります。
ちなみにPOVホラーというのは、手持ちカメラを使って、あくまで個人撮影された映像ですよ、という体を用いて作られたホラー作品です。FPSゲームのホラー版って感じです。
感覚的には『モキュメンタリーホラー』も『POVホラー』も似通った部分が多いです。
そもそも「ホラー」って創造物なんで本物とか偽物とかないので、ドキュメンタリーや個人撮影のホラーって何よ?って感じで。

でも、これがとても面白いんです。クリエイターの腕によって、如何にも有り得そうで有り得ないだろうギリギリを攻めた作品…。
それが『モキュメンタリーホラー』ドキュメンタリーの体を装ったホラー。
そして、昨今だと解釈拡大されてきて「本当に起こった事」という体で作られたホラー作品も『モキュメンタリーホラー』と呼んだりします。
ここが「ホラー」の面白い所で、ホラーは絶対に創造物な筈なんで、「本当に起こった」というのは体でしか成り立たないって構造な訳です。
かなりマニアックな話なのでついてけない人もいるかと思いますが、このフワフワした感覚を知っちゃうと病みつきになるんですよ。

こっからは何で『モキュメンタリーホラー』が流行る様になったのか?と、『モキュメンタリーホラー』が如何に面白いジャンルなのかを自分なりに書いてみようと思います。

ここまでで興味が湧いた方は『モキュメンタリーホラー』で検索してみて下さい。無料で観れる作品も多くて、それも良質な作品が沢山落ちているので、すぐにでもこのフワフワ感を感じる事が出来ると思いますよ!

まずはザックリと『モキュメンタリーホラー』の変遷を自分なりに纏めていきます。

自分の感覚だと、15年くらい前くらい?ネットに動画文化が根付いてから一気に根を張った感覚があります。YouTubeも転載動画がどっさり載ってる頃でニコニコとかはコメント祭り・クリエイター増産期で2ちゃんも全盛期後半で…そんな中で、どこから出てきたのかよく分からない映像という価値がグッと高まった気がしています。

2ちゃんだと洒落怖とかの創作を実況的に発信したり電波サイトの披露だったりの形から、意味不明な動画を貼ってそれが伝播していって…。
その辺りの時期は簡単に転載されちゃうから、YouTubeからニコニコ、その他様々なサイトに廻されまくって、都市伝説的に広まっていく動画などもありました。今でもけっこう見れたりします。ディープウェブから流出した…云々系とか。

そんな感じのネット文化はホラーの不可思議さと親和性が良くて、元々ホラー圏に居た人達も、動画が意図されずに拡散されていく事を不安視しながらも、ホラーという存在そのものが不安定性を肯定している感じがあるので、誰も統制が効かないままに拡散され続けて、そこにクリエイターが面白い作品を差し込んでいって増幅を続けていく…。
そんな感覚が肥大していった結果、10年近く脈々と流れるドス黒い川が氾濫したのが、今だったって事なのだろうと。自分はそんな解釈をしています。

そんな環境が出来上がっちゃうと、これは創作です!完全に作り物です!とか言っても、只々白けるに過ぎないから、特に何も言わずに出す様になる訳で、「おわかりいただけただろうか…」が流行ると、二匹目のドジョウを狙った作品がどんどんと出てくる。それが作品的説明を省いた状態で切り抜かれて拡散する。視聴した人は、作品なのか誰かがアップロードした物なのか判別できなかったりして。

その流れの中でホラーは「メタ視点」を獲得してしまった感じがします。違法性はホラーの不可思議と絡み合って、そこで目の肥えた視聴者達が新たなホラーを欲しがっていくと、より「メタ感覚」のホラー作品を才気あふれるクリエイターが繰り出してくる。それに歓喜する視聴者は、「自分もクリエイターになりたい」って感じに意味分からないホラーと呼べるのかも怪しい様な奇妙なアプローチを行ったりする。

そのコントロール不能なクリエイティブの暴走がSNS全盛の時代に注目を浴びる様になった。そんな気がしています。
最早、誰が何を作って何を記録しているのか追う事の出来ない時代に、ホラー作品です!と宣言する事は、裏を返せば、ホラー作品として観ることで成り立つホラー体験であって、クリエイターのネットに対する挑戦にもなっている。この素材で私が作った幻想を超えてみなさい、奇妙で奇天烈な奇文や映像が着弾した際の衝撃に貴方なりのレスポンスを返してみてくださいな!
なんて感覚を覚える様な作品も続々と作られている様な気がしています。作品同士が干渉し合っている世の中になってるんじゃないかな?なんて。

この「何が作品で何が作品ではないのか判別つかない世界」の中で、だって昨今作られた作品が翌年以降にはどの様な拡散をされるか予想できない世の中で、『モキュメンタリー』という『ホラー』は何を意味するのでしょう?

どのみち、ホラーは創造物なんです。古くから、厄災に意味付けする為に拵えられた、触れてはいけない存在や場所など、それらに娯楽性を付随させた物が『ホラー』なのだから、所詮創造物に過ぎない筈なのに、今この時代には創造物という価値が欠落しかけている…「ホラーなんて作り物なんだから」なんて言葉は意味を失いかけている。
だって、ホラーとして意図されて作られていない物にだって、一度下手に拡散されてそれに恐怖を感じる人が多ければ、後の世にはホラーとして伝わっていくのだから。

『モキュメンタリーホラー』という言葉は実験的創造物を表すのだと個人的に考えています。
この不可思議で捉えようのない現実の多重性や仮想性はホラーが生み出してきた、『現実にホラーという魔法をかけて非現実なフィルターで現在を見る』という構図を、現在進行形で行っている社会では当たり前、というか、みんな現実と仮想現実を重ねて捉えている訳なので『ホラー』というバイアスが掛かった途端に『ホラー』は現実だけでなくネットという仮想現実も侵食する訳なので。
この複雑性に『モキュメンタリーホラー』でござい。を振り撒くと、それに触れた人々は各々勝手な解釈を始めて、不可思議に拡散され『モキュメンタリーホラー』から『モキュメンタリー』が抜け落ちて『ホラー』になるのだと。そう思うんです。

だから、敢えて『モキュメンタリー』という単語を用いて、これは嘘ですよ!と吹聴する訳です。だって、嘘か真か証明する手立ては有りませんから。

私は『モキュメンタリーホラー』は実験的だと思います。緻密で精緻な作品で人の多重性を何処まで引き出せるか?
様々なパターンが考えられます。『モキュメンタリーホラー』と銘打って作品を作り、実際にその作品内に登場する施設などのホームページを敢えて作ったり、路上に作品に登場するシールを道端に貼ったり、作品内で深い価値を持つ記号に近い意味合いの落書きをしたり、不思議な儀式的行動を行ってみたり。
それを見つけた誰かが勝手に思うままに拡散してくれて、噂が一人歩きしてホラーの伝播が起こる。この構造がホラーになっている。と。

だから、ちょっと空想実験してみた事があります。エイプリルフールに書いたモキュメンタリーホラーは本当なのか嘘なのか?
これは創造物です。と謳って『モキュメンタリーホラー』を創造した際に、それが「嘘をついても許される日」に行った場合、儀式的意味合いにならないかな?なんて。
『モキュメンタリーホラー』の『モキュメンタリー』を嘘をつく儀式日に行うという事は、果たして本当なのか?空想なのか?どうやって判別するのだろうか?
人の興味は異常な迄に不可解で未知に溢れています。ホラー作家が「実はこの話は本当なんです」と言っても、その発言も創造物の一部になってしまいます。
けれど、そこから深読みが始まって、嘘ですという事はホントなの?とか、以前の発言で本当だという事を否定しているのに現在では肯定しているという事は言わされているのか?そんな感じのやり取りが行われていくんです。それがとても楽しい時間な訳です。

だから、ホラー作家は今の時代に複雑で多重性を孕んだ意味深な作品に精を出すんだと思っています。
そして、私自身もそれに影響を受けて、作品内で行われていた儀式をやってみようかな?それって嘘が真にひっくり返るのかな?なんて狂っていく訳です…。

この奇妙で不可思議な時間を様々な人達に知って欲しいなと思って書いてみました。

長文を読んで頂きありがとうございました。

この感覚がより多くの人に伝播し感染していく事を願っています。

現実が『ホラー』に侵食されるその日まで…。

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