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ショートショート ヤエー!

博士「やっとできた〜!!!」
私「盛り上がってますね?今回は、何ですか?」
博士「よく聞いてくれた!これは『ヤエー1号』だ」

私は博士の指差した大きめの早押しクイズボタンのようなモノを見た。…(何だこれ?)

博士「ほら、ワシは前にバイク乗っていただろ?バイク乗りの中ではすれ違ったら手を振る、いわゆる"ヤエー"という習慣があるのだよ。」

私(ほうほう、察しがついたぞ。つまり、このデカい早押しボタンでヤエーするってことね。)

私「なぜそんなモノを?」
博士「実はバイクで事故って、それ以来トラウマなのだよ。しかし、車だと誰も"ヤエー"してくれなくて、わしは構ってほしいのだッ!」
私「まぁまぁ。というか、車から"ヤエー"してたんですね…。使ったらどんな感…
博士「早速ドライブへ〜レッツラゴー!」

バイクがすれ違うたびに"ヤエー"をしてくれているみたいだ。博士はとても上機嫌。たまに新聞配達のおばちゃんは返してくれないけれど…。

ここで『ヤエー1号』について軽く触れると、運転席でボタンを押すと、ボンネットの上に乗ったプレートが起き上がるようになっている。プレートは手を型取っており、擬似的に"ヤエー"ができるという寸法だ。博士の遊び心で、プレートの手のひらには『卍』(まんじ)の文字を施したという。

博士「最近、若者の間で流行っているのだろ?『卍』。チャリで来た卍!」
などとはしゃいでいたので、(いつの話をしているんだ?)と思いながら、愛想笑いしておいた。

ある日のドライブで、例の如く、『ヤエー1号』を使っていたところ、バイクを停めて、興奮気味にこちらに来る外国人がいた。私も博士も、純日本人ですので、外国語はさっぱり。しかし、彼はグーで手を出してきたので、パーで受けてみた。(そういうコミュニケーションもあるんだなぁ。少し痛かったけど。)彼は上機嫌そうだったので、物珍しさに興奮したのだろうと、博士と2人で満足していた。

ある日から博士は旅行に行っている。まだ帰ってきてはいないが、どれだけ楽しんでいるのだろうか?私も連れて行ってもらいたかった…。

博士「本場のガレットを食べたいんだ!ビールとソーセージも一緒にね!…もちろん、いつもの車は持っていくさ!向こうはB◯Wの本場だからね。たくさん『ヤエー1号』の出番はあるだろうよ。」



あとがき

ど~も〜。旅ノリです。
今回のショートショートは、先日、友人と老舗の秘湯へ遊びに行った時を思い出して創りました。その秘湯は峠道を越えていくので、バイク乗りがたくさん走っていて、気持ちよさそうでした。さらに、温泉は茅葺き屋根の由緒正しい場所だったようで、樹齢130年超えの一枚板の机や、箪笥、感謝状などの資料も残っており、初めて本物の"赤紙"も見ました。歴史に触れて、温故知新で成長していきたいものですね。

したらね〜。

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