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Trapeze偏愛記

個人の主観に加え超独断と偏見で私の中の史上最強ロックバンドは勝手にTrapezeだと思っている。異論はもちろん認める。
Trapezeとは1969年イギリスにてデビュー、1982年解散の基本スリーピースバンド。
メンバーはVo&Ba:グレン・ヒューズ、Gt&Vo:メル・ギャレー、Dr:デイヴ・ホランドの3人である。
え?と思った方はロックファンですね~。そう、この3人デビューしたバンドではなくてその後の転籍先で名が売れた皆さんなので。
グレンは言わずと知れたDeep Purpleへ。メルはWhinesnakeへ。デイヴはJudas Priestへそれぞれが進んだ。
私もきっかけはWhitesnakeから。掘り下げていってTrapezeにたどり着き、聴いてみて悶絶…。一気に大好きになってしまい、大好きになりすぎてどんどんマニアックにハマった。
今でこそ聴いて、目新しい感じはしないかもしれない。よくあるヘヴィロックだし、ファンクロックだよね、みたいな。
でもそれってすごいことで、現代においても彼らの音楽が通用することの証明だ。彼らがこの音楽を作ったのはもう50年前。50年後も廃れずに聴き続けられる音楽を作れた彼ら。能力の高さを物語っている。
デビュー当時の彼らは5ピースで、所属したレーベル、スレッショルドレコードの影響もあったのか(スレッショルドレコードはプログレッシブロックの大御所ムーディブルースの作ったレーベルでありますゆえ)プログレッシブロックに傾いたアルバムを作っていたが、このアルバムがあまり売れず、どうやら仲間割れ?が起こったらしい。そこで3ピースになり、セカンドアルバムで大変容を遂げる。荒々しく尖ったヘヴィロックにシフトしたのだ。
彼らはBBCの番組に出演したことからアップルからも声がかかったが、アップルではオリジナル曲はNGで外部ソングライターの書いた曲を演奏するという条件が付いていたらしく結果NOを出したらしい。これは正解だったかもと思う。Badfingerの例を引くまでもなく、ここからのアップルの経営状態は悪くなっていっただろうから、彼らもアルバムを発売できなかったり、レーベル移籍しようとしてアップルから妨害されたりということがあったかもしれないし、早く解散になっていたかもしれない。
Trapezeのメロディメーカーはグレンとメル。グレンが在籍していた1973年まではグレンとメルの作曲比率は半々くらいだったと思うが、グレンがDeep Purpleに加入してからはメルが大半の曲を作っている。グレンは意外にも?といったら悪いけどロマンチックな曲を書いている。ソウルとか、R&Bの香りがしてムーディに浸れる曲である。メルはその穏やかな風貌からは想像もできないくらいにメタリックな、ハードな曲を作る人だ。彼はギタリストだけれどもカッティングがすごく得意で、特徴あるリフが目立つ。反面ソロはアルバムにおいては余白を作っているというか全然弾いてない。本人はいかに弾くかよりもいかに弾かないかのほうが重要なのですと生前言っていた。その点で言えばFreeのポール・コゾフもそうかなあとか思う。

私は自分のアイコンもそうだし携帯の待ち受けもそうなのだがメルの写真をぺたし、としている。はい。私はメルが大好きです。彼はすでに彼岸に旅立たれているが、生きていれば75歳。まだ元気でいてもいいころだ。彼はTrapezeのオリジナルメンバーであり、Trapezeの終焉を見届けた人間である。グレンが抜け、デイヴが抜けたTrapezeを曲を作っては弾き、歌い、バンドハンドリングもしながら飛ばし続けた。度重なるメンバーの引き抜きや、レーベルとの軋轢、印税の不払いなどと闘いながら懸命にTrapezeを維持してきた彼は私からすると(もしかしたら日本人からしたら)逆境に立ち向かうヒーローのようで感情移入をしてしまったのだ。辛くても負けない頑張る姿に。
でも、多分、それは違う。
逆境に負けたくないから彼はバンドを維持したんじゃない。多分大好きだったんだ。好きなもののために懸命だっただけなのだ。
手塚治虫が亡くなる前病床で漫画を描くのを「入院中くらい仕事するのはやめなさい」と言われたのと一緒だな、と思う。手塚治虫は描きたくて仕方なかったらしい。メルも同じでNo Music, No Lifeだったのに違いない。
奇しくも彼らは同じ60歳で神に召されている。

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