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ナゴルノ・カラバフ紛争は停戦へ―結局トルコはロシアに花を持たせることに


先月27日に始まり一時全面戦争の様相を呈していたアルメニアとアゼルバイジャンによるナゴルノ・カラバフの戦闘に出口が見えてきました。

ロシアの仲介により9日モスクワで両国代表が対話のテーブルにつきました。10時間に及ぶ協議を続け、現地時間10日午前12時より停戦を発効することで合意しました。ナゴルノ・カラバフを統治するアルツァフ共和国の自衛部隊は戦闘停止の命令を下しました。その後もアルメニア、アゼルバイジャン双方が互いの停戦違反を非難しあいました。現状戦闘が再燃する公算は低いように見えます。

トルコの支援を背景にあれほど強気だったアゼルバイジャンが何故停戦に応じたのか?それは単純にアゼルバイジャン軍がナゴルノ・カラバフを占領するのが難しいことが明らかになったからでしょう。トルコメディアはアルメニア勢力撤退後の拠点にアゼルバイジャン軍が旗を掲げる動画を盛んに宣伝していました。

アルメニア側はわざと拠点から撤退しアゼルバイジャン軍を誘い出し砲撃を加え甚大な被害を与えたと主張しました。トルコは開戦初期F16でアルメニア軍のSu25を撃墜し、またシリアやリビアから傘下のシリア人傭兵を送りアゼルバイジャンを支援していました。結局、前線が大きく動くことはなく、いつもの衝突同様アゼルバイジャン側が日々大きな犠牲を積み上げました。ロシアの仲裁はアゼルバイジャン側にとって渡りに船となりました。

今回の紛争はロシアがシリアの和平協議同様、地域紛争への介入・解決を通じて国威発揚しただけに終わりました。結果、トルコはロシアに花をもたせただけで、またしても対外政策に失敗したわけです。一部の親トルコ勢力を除き国際社会は、トルコがアゼルバイジャンの暴挙の背後にいると疑っています。前述のトルコの支援からもトルコが戦闘に備えていたことは明らかと言えます。ある意味でロシアに救われたと言えます。このまま戦闘が一進一退の攻防を続けアゼルバイジャン軍が醜態を晒す事態になれば、エルドアン政権への大きな痛手になります。また、開戦時に下落したトルコリラも停戦協議が始まり反発し上がりました。停戦が成立したおかげで傷口が小さいうちに事を収めることができたのは幸いでした。アゼルバイジャンはトルコによるシリア傭兵投入を否定する等、トルコ派紛争に関与していないと主張してきたのに、何故か停戦にはその関与も必要と主張していました。トルコ大統領府報道官イブラヒム・カリンはアルメニア軍がナゴルノ・カラバフから撤退することが紛争終結に不可欠と主張し続けています。停戦協議の結果、トルコの声が届くことはありませんでした。アルメニア、アゼルバイジャンはロシア主導でナゴルノ・カラバフ紛争の解決を目指す欧州安全保障協力機構ミンスクグループにおける交渉のテーブルへ戻ることで合意しました。トルコはナゴルノ・カラバフ紛争へ中途半端に介入し、交渉の場面では蚊帳の外に置かれ面目を失うだけに終わりました。

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