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並行宇宙間の移動時の夢

別の世界線から自分達の元の世界線に帰る、並行宇宙を横断するためのゲートの近く。研究者が多い。別の世界線から意義のあるものを説明付きで登録して持ち帰ろうと彼らが準備しているところに、異端の大先生が立ち上がり、二つの色の違うバレーボール様のものを見せながら、皆に言う。自分は、特別なものには興味がない。これからこの2つのボールを、この世界線と私たちの世界線の両方に置く。この宇宙にはその後もこの二つのボールが同時に同じ空間に存在できる、その可能性がある。その可能性を確かめるための実験が大事なのであって、ボールそのものには大きな意味がない、と。

限りなく似た、しかし具体的には必ず違う境遇を経て、同じ様な生活をしながら、しかしお互いを知らない人々が都会の郊外のドーナツ状の空間に大量に暮らしている、そして自分もその一人だ、ということに気づいて愕然としたのはまだ子供の頃だった。並行宇宙をモチーフにした物語と体験は、このようなとても身近な現象に繋がっている。私が生きた1日に隣り合った人生が必ずああるはずなのに、しかし私たちはお互いを知らない。世界線は絡み合っているのに、想像の先に踏み出すことが難しい。良い物語はその線を悠々と横断してゆく。私はこの異端の先生のように実験を繰り返し、物語がそこに生まれる様子を見たい。

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