離婚することにしました。8

2009年5月 結婚
出会った日から2年後に籍を入れた。
結婚するまでに、やっぱり結婚をやめようと思うことがいくつかあった。
あれ?と思った気持ちを無視したことは失敗だったのかもしれない。

2007年に付き合い始めて、1年も経たない2008年春に彼は転勤で東京に行った。
1ヶ月に一度、彼に会いに東京に行く。
最初のうちは帰り道泣いていた。
けれど、そのうちフラフラ出来る自由が勝って帰り道に泣くことはなくなった。
このころの私はまだ可愛げがあった。
会えば楽しい、その頃の私は彼の家でいそいそと色んなご飯を作ったりした。
北京オリンピック柔道を観戦する彼のために、汗を流しながら台所に立っていたのは良い思い出だ。
付き合って1年が経過しても、溺愛されていたと思う。
私はそうされて当然となぜか思っていた。
荷物を持ってもらうのも、私の洋服が乾いていなければコインランドリーの乾燥機に彼が走るのも当たり前だと思っていた。

溺愛されるのは当たり前と思いながらも、引っかかることがいくつもあった。
最近までの私は、人と会う約束をしたら何を話そうかメモを用意して話題が無くならないようにしていく癖があった。
彼はそれをやらない。毎回毎回私が話題を用意しなければならないのか不満だった。
話題を用意しないと話が続かないことを深く考えるべきだったのに。

もうひとつ引っかかっていたこと。
話の最中、彼は突然自分の世界に飛んで行ってしまうのだ。
これは彼本人に指摘した。
彼曰く、言葉や発言をきっかけに自分の心の奥深くに飛んでしまうとの事だった。
昔の恋人にも指摘され別れたこともあるとの事だった。
当時の私は独りぼっちにされても、まぁたまになら良いかとその当時は思うことにした。
好きゆえに気になることに目をつぶってしまった。
良いところ(私を溺愛しているところ)もあるし、まぁいいかとしっかり考えずに引っかかった気持ちを流してしまった。

まだ気になることがあった。
彼は友達が居ないのだ、一人も。
大学の同級生の女性を親友と言っていたが、社会人になってから一度も会ってないし連絡も取っていなかった。
7年も年賀状だけの関係で会わないのに連絡とらないのに親友?

私は自分に降りかかった様々な問題を解決するにあたり、ああでもないこうでもないと友達に相談して最終的に自分でゴールに辿り着くスタイル。
彼は自分だけでゴールに辿り着くスタイルだから、問題が起ころうとも私のように友達をそもそも必要としなかった。
彼の、自分だけで問題を解決できるところは尊敬できた。
しかし、私は問題解決の答えを自分で出すにしても最善策を取りたいし、
自分の考える世界は狭いのも分かっているので他人の意見を取り入れる。
彼は他人の意見を取り入れず、すべて自分で判断して答えを出す。
これが後々とんでもないことになる。

出会うきっかけになった立ち飲み屋には一人で通い続けていた。
両家の顔合わせなど済んだあとのことだったと思う。
結婚が確定したその頃、その店の常連のサラリーマンで話の面白い人がいた。
そのサラリーマンはお店で会うといつも、どこかで既に飲んできたのか軽く酔っていた。
みんなと楽しそうに雑談を交わし、私ともちょこっと話したらまた次の常連さんと話し、いつのまにか帰っているという。
止まり木にずっと居ない鳥のような人だった。
話が面白いからあっという間にみんなの人気者になった。
話すとワクワクして気分が上がる、そんな人。
その立ち飲み屋に行くとき、今日も会えたらいいなと思うようになっていた。
どこの飲み屋でもいそうなサラリーマン、綺麗な青色の二つ折りの財布は色んな店のポイントカードでパンパンだった。
そういうダサさも可愛らしく映るくらいに話が上手で、私はそれを楽しんだ。
彼との電話で青い財布のサラリーマンの話はしていた。
青い財布のサラリーマンは、こちらの軽い提案にいいね!と軽く乗っかってくるタイプで、付き合ったら楽だろうなとは思っていた。
思わず電話で、
「ああいう人と結婚したいな」とうっかり本音が出た。
電話口で彼は激昂した。
私は面倒なことになったなと心の中で舌打ちした。

週末、謝罪するためだけに東京に日帰りで行った。
彼自宅の最寄り駅の構内にある喫茶店に入り、なんとなく言っただけで深い意味はないと詫びた。
詫びてみせた。
一時間ぐらい膠着状態が続き、彼の態度が軟化したのを良いことに、私はようやくたばこを吸えた。
ようやくなんとか許しを貰い、東京駅まで送るという彼に、私が怒らせて詫びに来たのだから送ってもらうのは申し訳ないと辞退した。
本当は、謝罪している今の状況に疲れてしまい早く一人になりたかった。
東京駅から新幹線に乗って車内でビールを飲んだ。
私は全然反省してなかった。
今日は遅くなったから飲みには行けんなとぼんやり思った。



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