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5分でそこそこ把握できる2023年版中小企業白書(最終/真の課題を見つけること)

 G.W.プラスアルファくらいで、2023年版中小企業白書、読了しました。読み応えのある読み物でした。最後のナナメ読みは第2部・第3章を読んでの感想です。

最終章のテーマは「真の課題を見つけること」

 第3章のタイトルは「中小企業・小規模事業者の共通基盤」。共通基盤として挙げられているのが、価格転嫁、デジタル化、支援機関の役割。このうち価格転嫁は前々回で触れたので、残りの部分を中心にナナメ読みしました。そこで感じたのは、「真の課題を見つけること」の大事さ。

4割はデジタル化を推進する部署(人)はない

 デジタル化を推進している部署(人)をアンケートした結果、まずは「経営者」とする回答が5割。もっとも危機感を持って取り組むべきは経営者。兄弟図書(かどうかはさておき)のDX白書2023では、両利きの経営で有名な入山章栄先生がこう言い放ってます。”DXの 本質は経営改革であり死ぬ気でやるぐらいの覚悟をもって取組むことが必要”(同白書152ページ)。社長が一番危機感を持っていて当然、というところです。そして、それを実行に移す部署(人)はどうだろう、というとこれ(↓)。

2023年版中小企業白書(468ページ)

推進する部署(人)はない、というのが4割。いくら社長にやる気があっても、これだと実務的にはなかなか進んでいかない訳ですね。

自社のデジタル化を進めるのに、それほど高度なデジタル人材が必要なのか問題

 ところでところで、御社のデジタル化を進めるのに、そんなにすごいデジタル人材が必要なのか、という問題もそこにはあります。こういうデータもありました。

2023年版中小企業白書(486ページ)

 ちなみにこの段階4って、「デジタル化によるビジネスモデルの変革や競争力強化に取り組んでいる状態」だそうで、ほぼほぼ理想形に近い段階です。そんな企業でも、段階1「紙や口頭による業務が中心で、デジタル化が図られていない状態」の企業と、そんなにそんなに求める人材って変わらないんだな、とも思いました。白書でもこう言ってます。”必ずしもそうした高度なスキルを持つデジタル人材を自社内に抱えていない場合でも、デジタル化の取組を進展させることが可能”(487ページ)。
 ある程度、委託先のIT企業の人たちが使う専門用語が分かって、それを社内向けに翻訳できる人がいれば、あとは必要なものは委託すればいいですからね。いるでしょ、やたら英語とかカナカナ使う人。例えば「IPOを目指すべきですよ」とか言う人。株式公開って言えばいいのに、みたいな。そういうのを分かりやすく変換できて、あとは、社内に必要なITを見極められるかが大事、ですね。ただ、推進する部署(人)はない、が4割と。

ところで、真の課題を見つけられているのか問題

 こういうデータもあります(↓)。例えば①。デジタル人材が確保できてない場合、経営上の課題を見つめ直してないってのは分かるんですけど、デジタル人材がいても4割は課題を把握できてないんですね。そのデジタル人材には、きっと、経営企画とは別のことやらせてるんでしょうね。工場の業務効率化とかですかね。もったいないですな。本人は全体を俯瞰したいと思ってても、業務外のことはやりづらいですからね、もったいないですね。

2023年版中小企業白書(493ページ)

 そんでもってこれです(↓)。支援機関に相談する、というのは結構困って困って相談する、ということだと思うんですが、相談内容の圧倒的No.1は「どんなITツールを使ったらいいですか?」(42.5%)だって言うんです。

2023年版中小企業白書(497ページ)

 デジタルを担う部署(人)がいないとか、デジタルに紐づけて経営の課題を考えられてないとかっていう、これまでの経緯を考えると、「それってホントに正しい相談内容なのかな?」と思っちゃうわけですね。もしかして、「当社のどこを、どこから、どうしたらいいと思います?」と、素朴な質問をすべきなんじゃないか、とも思っちゃうわけです。

真の課題を設定するのが得意な人たちがいる。

 真の課題を設定するのが得意な人たち。よろず支援拠点や中小企業診断士、とのこと。よろず支援拠点には中小企業診断士がいっぱいいますから、中小企業診断士のことです、これ。

2023年版中小企業白書(524ページ)

 私も指導教官から熱く言われました。「社長がもやもやっとしている課題を明確化しろ」「社長のやりたいことをサポートするばかりではない、本質的な課題を見つけろ」「フレームワークにこだわり過ぎると本質を見失う」、とかとかとかとか。こういうことばっかり考えるようになったから、会社でけむたがれるようになっ...
 ということで、この後の、後半部分はどのように経営力再構築伴走支援なものをしていくか、その力を高めていくか、ということが滔々と書かれていました。

聞き上手であれ。

 この経営力再構築伴走支援なるもののポイントは、中小企業が「自己変革力」を高めるために、経営者との「対話と傾聴」を通じて経営者自身に本質的な課題への気づきを促し(535ページ)...だと書かれています。
 た、多分、経営者の皆さんは気付いてはいるんだと思うんですけど、うまく表現できてない場合もあるだけで、気付けてない前提なのが、上から目線で気になります。
 あ、あとは、さっきの、妙にカタカナ言葉や英語が好きな人と一緒で、簡単なことをやたら難しく言う人いますよね。やれ、ゴルディロックス効果だとかパレートの法則だとか。いやそれ、松竹梅とニッパチのことでしょ、というやつです。これもそうだなあと。対話と傾聴ってのは結局、”聞き上手であれ”ということでしょ、と。
 白書の最後に、自分に言い聞かすような言葉が浮かんできて、あ、「読んでよかったな」と思いました。実力を伴うことが大前提ですが、「○○さんに相談したい」と気軽に思ってもらえるような診断士でありたい、そう思い描きながら、2023年版中小企業白書を、パタンとしました。
(5分でそこそこ把握できる2023年版中小企業白書、おしまい)


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